SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. シングルマザーの健康を改善するには行政が動く必要が【専門家提言】

シングルマザーの健康を改善するには行政が動く必要が【専門家提言】

更新

疲れた目と頭痛を持つ若いビジネスウーマン
※写真はイメージです
Tomwang112/gettyimages

国立成育医療研究センターの社会医学研究部が行った研究によると、1人で子どもを育てているシングルマザーは、喫煙・飲酒の頻度が高く、睡眠時間が少ない傾向にあることがわかりました。この研究を行った同研究部室長の加藤承彦先生に、今回の研究から考えられる、シングルマザーの健康状態について聞きました。

1人で子どもを育てているシングルマザーの3人に1人が喫煙

*「やめた」「吸わない」群を省略

今回の研究は、厚生労働省が実施している国民生活基礎調査(※)の2016年データをもとに、5才以下の子どもがいる1万9139世帯のママを対象に実施。ふたり親・ひとり親(シングルマザー)を三世代同居(両親・ママ・子どもが同居)の有無で分け、アンケート結果を分析しました。

その結果、三世代同居なし(=1人で子どもを育てている)シングルマザーは、約3人に1人が毎日喫煙していました。また、飲酒習慣については、三世代同居なしのシングルマザーの12%が「毎日飲酒している」と回答。ふたり親世帯のママは三世代同居あり・なしともに6%、三世代同居ありのシングルマザーは8%でした。

――1人で子どもを育てているシングルマザーは、喫煙・飲酒ともに頻度が多い傾向という結果でした。これは、それだけストレスが多いということでしょうか。

加藤先生(以下、敬称略) 子どもと自分だけの生活は、時間的、肉体的、精神的に余裕がない環境だと想像できます。経済的な問題など不安も大きいでしょう。そうしたストレスを発散する方法として、喫煙や飲酒を選んでいるのではないかと思います。

※保健、医療、福祉、年金、所得など国民生活の基礎的事項を調査。3年ごとに大規模調査を行っており、加藤先生たちが研究を行った際の最新データは2016年もの。

仕事、家事、育児を1人でこなすために、睡眠時間を削っている

今回の調査によると、1人で子どもを育てているシングルマザーの15%が、5時間未満しか睡眠をとれていませんでした。7時間以上の睡眠時間をとれている人は少なく、十分な睡眠をとれていないようです。

――仕事、家事、育児を1人で行わなければいけない環境だと、睡眠時間を減らして対応するしかないということでしょうか。

加藤 同居する大人がいない環境では、育児や家事を分担する、子どもを見てもらっている間にほかのことをする、といったことはできません。1人で子どもを育てているシングルマザーは、恒常的に時間に追われた生活をしていることが、この結果からわかると思います。

――1人で子どもを育てているシングルマザーは、健康状態が悪くなりやすい状況にある、ということがよくわかりました。ママの健康状態がよくないと、子どもにも影響が出るでしょうか。

加藤 喫煙習慣は子どもの受動喫煙につながり、子どもの健康に悪い影響を及ぼすことがわかっています。さらに、ママの心の健康状態がよくないと、子どもとの愛着形成がうまくいかなかったり、子どもが成長の過程で問題行動を起こしたり、うつ傾向になったりするなどの問題が起きる可能性があります。

「困っていること」「支援してほしいこと」を発信することも必要

――ママが健康でいることは、子どものためにも欠かせないことのようです。多くのストレスを抱えているシングルマザーの健康状態をよくするために、できることはあるでしょうか。

加藤 健康状態が悪く、社会から孤立した状態で乳幼児を1人で育てているシングルマザーに、自分で何とかしてもらおうとするのは現実的ではありません。行政が自治体のデータを活用してアウトリーチ(支援を必要としている人のところに出向いて働きかけること)をする必要があることが、今回の調査で示唆されました。
日本人は「自分のことは自分で解決しなければいけない」と考えがちで、国もその自助努力に期待しがちです。でも少子化の今は、「子どもは社会全体で育てるもの」と考えるべきです。

まず、1人で頑張っているシングルマザーが、支援を受けやすくする環境を早急に整える必要があります。時間的にも精神的にも余裕のないシングルマザーに、「支援策をいろいろ用意しているから、必要なものを調べて、役所に申請しに来てください」と言うのは、困っている人たちにとっては非常に不親切な対応だと言わざるを得ません。申請方法を簡略化する、オンラインでも申請できるようにするなど、すぐにでも変えられることはあるはずです。

一方、シングルマザーサイドから声を発することも大切です。最近はSNSを利用している政治家が増えていますから、お住まいの自治体の市区町村長、議員などのSNSに「こんなサポートがほしい」「今こんなことに困っている」などのコメントを発信してみましょう。政治家は皆さんの生活をよくするために働いているのですから、遠慮なく声を発してください。そのアクションによって、多くのシングルマザーの環境が、いい方向に変わっていくかもしれません。
また、自分が発した意見が何らかの形で実を結ぶという成功体験は、メンタルヘルスの向上に非常に効果的です。

お話・監修/加藤承彦先生 図版提供/国立成育医療研究センター 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

1人で子どもを育てているシングルマザーは、さまざまなストレスから不健康な状態になりがちなようです。子どもを健やかに育てるためにも、自分で何とかしようと頑張りすぎず、支援を求めることも必要と言えます。

加藤承彦先生(かとうつぐひこ)

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。