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男の子の「おちんちんの皮をむくかむかないか?」ひと言では片付けられないルッキズムの問題が絡んでいること【ママ泌尿器科医】

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Ekkasit Jokthong/gettyimages

ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第37回。今回は、ひとりのパパから「男の子のおちんちんの皮どうする?」という相談から、岡田先生は医学的見解とは別に、そもそもの背景にある“ルッキズム(外見によって差別をすること)”の問題について問いかけます。「お母さん(お父さん)のためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#37です。

基本的な考え方は「幼少期に癒着をはがすようなケアをするべきではない」、でも……

先日、対面で開催した乳幼児の保護者対象「おちんちん講座」には複数の男性が参加してくれました。
講座終了後、とあるパパが「自分は若い頃、包茎を理由にからかわれたことがあり、とても辛い思いをしました。今は『幼い子どもの包皮を無理にむく必要はない』と知っても、わが子が同じ思いをしないよう何かしてあげたい気持も強くて、どうするべきか悩んでいます」と話してくれました。

男の子の保護者にとって、わが子の性器の包皮を保護者がむく(亀頭と包皮の癒着をはがす)か、むかないかは大きな関心事です。
「清潔を保ち、炎症を予防するために有効かどうか」という点に加えて、将来、「真正包茎(性行為や清潔に問題のある状態)になることを予防できるか」という点がポイントになります。

現在は、基本的には「幼少期に癒着をはがすようなケアをするべきではない」(癒着をはがすケアによる炎症や真正包茎の予防効果は乏しい。むしろ嵌頓(かんとん)包茎や再癒着などのデメリットがある)というのが泌尿器科医の間での基本的な考え方になっています。

ただし、このテーマが難しいのは「ルッキズム(外見によって差別をすること)」の問題が絡んでいること。

医学的に問題があるかどうかとは無関係に、「亀頭が常時露出している方が魅力的だ」「亀頭が包皮に覆われている状態は恥ずかしい」という価値観が根深く存在しています。
周囲の年長者や、テレビ、漫画雑誌等の影響で、早ければ中学生頃から、「●●はもうムケてるらしい」「△△はまだ包茎らしい」等、露骨に話題にするようになります。
こういった価値観に思春期からさらされ、傷つけたり傷つけられてきた男性にとっては「医学的に問題がないなら気にする必要はないよ」で済むものではありません。

日本の社会に根深く存在する“ルッキズム”

体形、顔のつくり、肌の色、毛髪、性器の形や大きさ。
自分の身体的特徴の中で、自ら選ぶことができるのはほんの一部です。
自分の選択や努力とは無関係の部分に優劣をつけられ、「劣」に該当する特徴を持っていたら、からかいやいじめの対象になるなんて、とても理不尽だと思いませんか。
しかも、性器に関連するものは相談のハードルも高く、より深刻になりやすいのです。

日本ではルッキズムが社会に深く浸透し、助長するメッセージが様々なメディアから日々発信されています。そしてそのことが、多くの人の生きづらさの原因にもなっていると私は考えています。
「世の中の価値観なんて簡単には変わらないんだから、今『優』とされる方に自分の身体を近づけた方がいい」と考えるのも自然なことです。
子育て中の保護者であれば、わが子が少しでも「優」側の特徴をもてるように、できることをしてあげたいと思うでしょう。

最近、私のスマホには頻繁に「身長を伸ばすサプリ」の広告が入ってきます。そこには「背の低い男の子のお母さん、必見!」と書いてあります。どうして男の子だけが身長を伸ばすことを勧められるのでしょう。そして、そのために注意を払わなければいけないのは、なぜ母親なのでしょう。

“男の子は身長が高い方が価値がある”
“母親は子どもの価値を高める責任がある”

令和の時代になっても、このようなメッセージがいたるところから発信されています。
その「優劣」は誰か(美容系産業など)が得をするためにつくられたものではないのか。「わが子のためにできることをしたい!」という親の気持を利用しようとしているのではないか。

保護者が飲み込まれないように、加担しないように、当たり前のように思われている外見に関する価値観を問い直してみることが世の中を変える一歩になるはずです。
わが子がどのような身体的な特徴をもっていたとしても、それが理由で生きづらさを感じたり、傷ついたりする必要のない社会を一緒につくっていきましょう。

文・監修/岡田百合香先生

構成/たまひよONLINE編集部

●記事の内容は2023年6月の情報で、現在と異なる場合があります。

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