【医師監修】赤ちゃんの視力 いつから見えて、どう発達していくの?
生後1〜2ヶ月の赤ちゃんでも目をキョロキョロ動かして見回すようなしぐさをしたり、ママの顔を見て笑ったりすることがありますよね。見えているのではないかと驚いてしまいますが、実際はどうなのでしょう?
赤ちゃんの視力の発達と、心と視力を刺激する遊び、そして視力の発達に関する注意点や気がかりなどについて「かたおか小児科クリニック」院長の片岡正先生に伺いました。
新生児〜生後3ヶ月の視力と遊び
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.01〜0.02程度。認識できる色は、黒・白・グレーのみといわれています。ほとんどの赤ちゃんは遠視の状態で生まれてくるので、ほぼ見えていません。とはいえ、物が近づくと目を閉じたり光に反応したりはします。光を感じる能力は胎児期に発達していると考えられています。
まだ両目の焦点を合わせる能力は備わっていないため、目的もなく眼球を動かしていることがほとんどです。まわりを見渡すようなしぐさを見せるのは、音やにおいに反応しているから。ママやパパが近づくと喜ぶしぐさを見せるのも、目が見えているからではなく体で感じ取っているのでしょう。赤ちゃんが顔の筋肉を自然に動かしているときに、たまたま笑顔に見えるということがよくあります。
2〜3ヶ月ごろになると、ぼやけていながらも相手の目や鼻、口などの顔のパーツも徐々に見えるようになります。
この時期の心と視力を刺激する遊び
生まれたころは30cmほど先がぼんやり見える程度だったのが、見ることで視力が少しずつ発達してきます。生後1ヶ月のころは赤など目立つ色のおもちゃやメリーなどを見せると、わかりやすく楽しめます。一度にあれもこれもと欲張ると、赤ちゃんの脳は疲れてしまいます。1つのおもちゃでゆっくり楽しみましょう。
2〜3ヶ月ごろからは「いないいないばあ」が楽しくなります。「ばぁ!」をしたときに、大好きなママ・パパの顔が見えることは、赤ちゃんにとって大きな喜び。「ばぁ!」の後に目が合ったら話しかけてあげましょう。
赤ちゃんの発達は促して進むものではありません。赤ちゃんが楽しいと思えることが、発達につながるのです。それはこの先もずっと同じ。周囲の情報に流されず、目の前の赤ちゃんがいい表情をしているかを見てあげてくださいね。
生後4〜7ヶ月の視力と遊び
この時期の視力は0.03〜0.08程度。だんだんと焦点が合うようになり、目の前で動くものを追視できるようになります。赤や黄色、緑など、色も少しずつ認識するようになります。
この時期の視力と心を刺激する遊び
見えたものに興味を示すと、手を伸ばしてつかもうとします。好きなにぎにぎやぬいぐるみ、音の出るガラガラなど赤ちゃんが興味があるものを手に持たせてあげましょう。プレイジムも一人で楽しみます。
この時期はママ・パパとの触れ合いも大好きですが、おもちゃを触ったりして一人で遊ぶことも楽しむように。それはじっくり自分の世界を育んでいる最中。じっと見守ってあげることが大切です。
5〜6ヶ月になると、目、鼻、口、手など体の部位にも興味がわいてきます。お互いの顔を触り合ったりすると、とてもおもしろがります。支えすわりやおすわりができてきたら、絵本の読み聞かせもいいでしょう。
生後8〜11ヶ月の視力と遊び
視力は0.1〜0.15程度になってきます。この時期はとくに視力の発達が著しい時期。人の顔を覚える能力がつき、さらに声など視覚以外の感覚機能でママとパパ、他人の区別がつくようになり、人見知りが始まります。
この時期の視力と心を刺激する遊び
この時期は全身で遊ばせることが視力の発達にもつながります。家の中でかくれんぼうをしたり、おもちゃなどにタオルやハンカチをかぶせて「あれ、どこに行っちゃったかな?」などと声をかけてみましょう。自分で隠れたものを探したりしますよ。
9ヶ月以降になると、ママやパパの動きをだんだんとまねするように。バイバイやバンザイ、拍手など、ちょっとした動作を赤ちゃんに楽しそうに見せると、赤ちゃんも楽しそうにまねをします。これは目で見たことを自分の体で表現するという複雑な脳の働きによるもの。まねできたらいっぱいほめてあげましょう。
生後1歳以降の視力と遊び
1歳ごろには視力が0.1〜0.2程度になります。立体視ができるようになり、奥行きや上下左右、自分と物の距離なども把握できるように。ただし、輪郭はまだはっきりとは見えません。
視力はその後3歳ごろまでに急速に発達し、4〜5歳ごろには子ども用の視力検査で1.0の視力になります。
視力の発達は8〜10歳くらいまでは続きますが、小さいうちほど視力の発達の度合いは大きくなります。
この時期の視力と心を刺激する遊び
1歳を過ぎるとあんよをする子が増えてきます。この時期からは全身を使った遊びが楽しい時期。おうちでもお外でも、自分で何かを見つけたり手で触ってみたりすることが、視力だけでなく五感すべてを刺激します。手指も発達してきているので、積み木や粘土など道具を使った遊びもいいでしょう。
赤ちゃんの視力の発達で注意すべきこと
赤ちゃんの視力の健やかな発達のために、大人たちが気をつけたいことがあります。生活の中での注意ポイントを知っておきましょう。
カメラやスマホでの撮影はフラッシュを使わずに
赤ちゃんの目はデリケートな状態です。赤ちゃんの写真を撮るときはフラッシュやライトは使わず、日中の自然光を利用したり部屋の明かりをつけたり、カメラの感度を上げるなどして撮影しましょう。
フラッシュやライトを何回か使ったからといって、すぐに視力が悪くなることはありません。やりすぎると問題が生じる可能性があるということなので、あまり神経質になりすぎないことです。
スマホやテレビ、DVDは「けじめ習慣」をつけて使用する
子どもが受け身的に長時間テレビやDVDを見ていると、言語や社会性の発達に悪い影響を及ぼすことがあることが指摘されています。スマートフォンが発するブルーライトは赤ちゃんの目には刺激が強すぎて、視力が低下する恐れがあるともいう意見もあります。
しかし、現代の生活の中でこれらをゼロにするのは難しいもの。活用次第ではいい面もあり、たとえば一緒に歌ったり、踊るなど、コミュニケーションの道具として利用することで、色彩感覚やリズム感などいい刺激を受けることができます。ママやパパの育児が少し楽になることも、大切なポイントです。
見せる時間や内容を吟味し、上手に生活にとり入れましょう。時間になったら一緒に消す習慣、子どもにスマホを与えっ放しにせずに親が管理する習慣、食事中はつけない習慣など、「けじめの習慣」をつけることが重要です。
〈上手にスマホ・テレビ・DVDを見せるポイント〉
・2歳まではスマホ・テレビ・DVDを見せる時間を、できるだけトータルで1日1時間以内に
・見せる時間帯も大人が決めて1日のリズムをつくる
・授乳中、食事中のテレビ・DVD・スマホの視聴はやめる
・テレビは画面から2m(できれば3m)以上離れて、正面から見る
・大きすぎない音量で
・明るい部屋で
・子どもが楽しめて刺激が強すぎない番組に絞る
赤ちゃんの目の動きや見方がおかしいと感じたら
赤ちゃんは成長過程で、斜視や弱視といった目の病気になることがあります。目の病気や遠視・乱視などの屈折異常、片目の視線がずれている斜視などがあると、視力の発達の妨げになります。
乳幼児期の目は発達途中にあって機能が完成していない時期だけに、目の病気も早い時期に発見できれば改善する可能性が高くなります。最近では、6ヶ月以上の乳幼児の視力の問題を数秒で簡単に検知できる「スポットビジョンスクリーナー」という検査機器があり、多くの小児科医院で使われています。赤ちゃんの様子が気になるときは、まず「スポットビジョンスクリーナー」のある小児科で検査を受け、必要に応じて小児眼科を紹介してもらいましょう。
家族に目に関する病歴のある方がいる場合、早めに眼科を受診して眼底検査まで受けておくことをおすすめします。
教えてドクター! 目の発達の気がかりQ&A
赤ちゃんの目や視力について、病気なのか問題ないのか悩むシーンも少なくありません。多くの声が上がった悩みポイントについて解説します。
Q 目を閉じていても紫外線で目がやられる?
1ヶ月の娘がいます。先日、義姉から「赤ちゃんは目が弱いから、外出時は帽子をかぶらせたほうがいいよ。目を閉じていても紫外線で焼けちゃうから」と言われました。旦那はそれを気にして、娘の目を帽子で覆ったりハンカチで隠したりしています。そんなに気にすることですか? いつになったら普通に外出していいんでしょうか? 外にいるのに景色が見られないのは、かわいそうな気がします。
A
確かに赤ちゃんがまわりの景色を見られないのはかわいそうですね。お義姉さんがおっしゃるように、赤ちゃんの目を紫外線から守ってあげることは大切ですが、長時間紫外線を浴び続けるようなことがなければ大丈夫です。紫外線が強い季節は帽子をかぶせる、ベビーカーの幌を下ろす、抱っこする人が日傘をさすなどして、通常の紫外線対策をしていれば、赤ちゃんの目を何かで覆う必要はないでしょう。
Q 座っているときに追視がうまくできない
もうすぐ生後5ヶ月になる男の子です。4ヶ月健診で追視の検査がうまくできませんでした。保健師さんによる検査でうまくできず、次に医師に検査され、そこでは「うまくロックオンすればできてますね」ということでクリアできました。横になっているときははっきりと追視できるのですが、座って行うとうまくできません。追視ができていないとどのような問題が想定されるのでしょうか。ちなみに、私の顔はしっかり見てくれます。私が部屋を歩いていると頭をふりふりして追ってくれます。
A
検査がうまくいかず、保健師さんや医師からいろいろ聞かされると心配になってしまいますね。追視の検査は、ちゃんと目が見えているか、動くものに興味を持つかどうか、という2点をチェックするのが目的です。この赤ちゃんは医師の検査をクリアしていますし、普段もお母さんを目で追っているようなので、問題はありません。もうすぐ5ヶ月ということは、まだしっかりおすわりができないのでしょう。横になっているときは体の自由がききますが、おすわりの状態では思ったとおりに動けず、追視しにくいのだと思われます。じきに座っていてもしっかり追視できるようになります。
Q 赤ちゃんの目が細いのは変わらない?
うちの子は純和風の顔立ち。とくに目は赤ちゃんなのに細い切れ長。親は2人とも普通の目だけど、もう少し大きな目になる望みはありませんか?
A
赤ちゃんはまぶたの皮下脂肪が厚いので、目が腫(は)れぼったく見える子もたくさんいます。たいていは、だんだんと目もぱっちり開くようになってくるので、印象は変わってくると思いますよ。今後大きな目になるかどうかはわかりませんが、どんな目だって、その子のかわいい個性ですから気にしないで。ただし、まぶたが垂れ下がって黒目を隠しているような場合は、視力に影響してくるので受診しましょう。
Q 親の近視は子どもに遺伝する?
私もパパも学生時代から近視です。子どもにも遺伝するでしょうか?
A
近視とは遠くを見たときに網膜の手前で像を結んでしまい、遠くのものがぼやける状態をいいます。強度の近視は遺伝的な要因が強いといわれていますが、軽度の近視はあまり関係ありません。むしろ成長していく中での、生活習慣が大きく影響します。この先テレビの見すぎなど、目に負担をかけるような生活を避けるよう心がけることが大切でしょう。赤ちゃんの視力はいろいろな人や物を見ながら育ちます。ママやパパの顔や外の景色などをたくさん見せてあげてください。不安なことがあれば健診で相談しましょう。
Q テレビは続けて見なければ大丈夫?
9ヶ月の男の子の母親です。よく「長時間のテレビ視聴はダメだ」と書いてありますが、具体的にどれくらいがダメなのでしょうか。家事の時間に1時間ほどテレビの幼児向け番組を見せ、最近購入した英語DVDを一緒に見るというのは多いでしょうか。続けて見せなければいいのでしょうか。
A
子どもにテレビやスマートフォンの画面を見せてばかりいると、発達が遅れることが心配されています。見せる時間が長くなるほど、外遊びの機会が少なくなり、人とのかかわり合いの体験不足を招き、親子が顔を合わせて一緒に遊ぶ時間が少なくなります。また、会話が成り立たないために言葉が遅れることもあります。食事のしたくをする間、目が離せないからなどで30分程度見せるのは問題ありません。
また、親子一緒にコミュニケーションをとりながら楽しんで見るのはいいですが、ほかの遊びや絵本を読んであげるほうが大切です。要はテレビやスマートフォンに子守をさせない、見せる時間は2歳まではできるだけ1日1時間以内に収めるようにしましょう。食事のとき、遊ぶときは必ず消しましょう。
Q&Aは全て「たまひよプレミアム」より転載
視覚をはじめ、聴覚や触覚など五感を刺激すると、脳も刺激され、赤ちゃんはどんどん成長していきます。とくに人の顔や景色をたくさん見せてあげるはよく、赤ちゃんの感性や情緒にもよい影響を与えるといわれています。赤ちゃんの成長に合わせてさまざまなものを見せてあげ、ママやパパも一緒に楽しみましょう。
(取材・文/かきの木のりみ)
初回公開日 2019/03/19
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