体の負担は?上の子のお世話は?年子で妊娠するときの注意点を医師に聞く
上の子の出産から1歳違いで下の子を妊娠・出産する年子育児。年子は大変なイメージが強いですが、「年子で産んでよかった」というママも少なくありません。
年子のメリットとデメリット、年子で妊娠するときの注意点など、年子に関する気になることを、日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長の笠井靖代先生に教えてもらいました。
年子ってどのようなことをいうの?
そもそも「年子」って、どういうきょうだいのことをいうのでしょうか。
なんとなくわかっているつもりの年子の定義について、きちんと理解することから始めましょう。
年子は必ずしも1学年差じゃない!?
「年子」とは「同じ母親から生まれた1歳違いの子ども」のこと。可能性としては、上の子の産後2ヶ月くらいで妊娠することもあり、その場合は上の子と下の子の年齢差は11ヶ月違い。反対にいちばん遅いと上の子と下の子は1年11ヶ月違いになります。
※下の子が正期産(せいきさん)で生まれた場合
このように年子は「1歳違い」ですが、必ずしも「1学年違い」ではありません。
日本の学年は4月~3月で区切るため、上の子が早生まれ(1~3月生まれ)だと、年子だけれど学年は2学年差になります。
例)上の子:2018年1月生まれ、下の子:2019年12月生まれ→年子で2学年違い
ちなみに、上の子が4月~6月生まれだと、翌年の3月までに下の子が生まれる可能性があり、この場合は年子で同学年ということになります。
例)上の子:2018年4月生まれ、下の子:2019年3月生まれ→年子で同学年
年子のメリットって?
前述のように、年子と言っても場合によってはほぼ2歳差になることもあります。
ここでは、上の子が1歳代前半くらいに下の子が生まれる場合の年子について考えてみましょう。
(1) 妊娠・出産の記憶が新しい
1人目で経験しているとはいえ、妊娠・出産はだれでも不安になるものです。1人目の妊娠・出産から時間があくほど前の記憶が薄れ、先が見通せなくなるので1人目と同じように不安が大きくなることがあります。でも年子の場合は、妊娠・出産の記憶が新しく、流れがわかっていますからで、不安がやわらぎやすいと言えるでしょう。
(2) 妊娠中、ママのペースで過ごすことが可能
上の子が1歳代なので習い事の送迎やお友だち遊びなど、上の子の用事で出かける機会が少なく、比較的ママのペースで妊婦生活を送ることが可能です。
また、上の子がまだ小さいため赤ちゃん返りがあまりないことが多いし、イヤイヤ期にも突入前なので、妊娠中や出産後に、ママの精神的な負担が少なくなる傾向にあります。
(3) ママの社会復帰が早めにできる
仕事をしているママは育児休暇を2人まとめて終わらせることができるので、仕事を元のペースに戻せる時期が早くなるでしょう。また、長い目で見ると、手がかかる時期が一気に終わり、育児が落ち着く時期が早くやってきます。
年子のデメリットは?
(1) ママの体への負担が大きい
妊娠・出産はママの体にとって大仕事。1人目の妊娠・出産で受けた体への負担が完全に回復するには1年くらいかかります。年子だと十分に回復しきらない時期に次の妊娠・出産することになるので、ママの体のへの負担が大きくなります。
(2) 妊娠中の上の子のお世話が大変
上の子がまだ歩けない時期に下の子を妊娠することが十分考えられるので、妊娠中も上の子を抱っこする機会が多く、体への負担が大きくなりがち。また、上の子にまだ手がかかり、大きなおなかで上の子のお世話をしなければなりません。
(3) 出産後は2人同時のお世話が必要
下の子が生まれたあとは2人同時に抱っこしたり、寝かしつけをしたりする必要があります。また、上の子が卒乳していないと授乳が2人分になり、授乳する時間が長くなります。お出かけの荷物も2人分なので、かなりの量になるでしょう。
(4) 一度に出る出費が多く、経済的負担が大きい
小さいうちはおむつやおしりふきなどの育児用品の出費が倍になり、大きくなると教育費がほぼ同時に必要になるので、経済的な負担が一度にやってきます。
上の子への接し方で変えなくてはいけないことは?
年子だと上の子の産後1年以内に妊娠するので、上の子はまだほとんど赤ちゃんです。妊娠中に上の子のお世話をどうやってこなせばいいのか、知っておくことはとても重要です。
抱っこはどうする?
年子の妊娠では、10kg近くある上の子を抱っこしないで済ますのは無理ですね。腰痛やおなかの張りなどがなく、ママがつらくない範囲でなら抱っこして大丈夫。ただし、猫背や体の反りすぎに気をつけましょう。
そしてお出かけするときはベビーカーを使い、ぐずったときだけ抱っこするなど、長時間抱っこしなくて済む工夫をしてください。
家にいるときに抱っこを求めてきたら、椅子に座って抱っこしたり、横になって抱きしめるなど、ママの体の負担にならない姿勢で抱っこしてあげればOK。
立って抱っこしなくても、スキンシップを求めてくる上の子に満足してもらえますよ。
< 注意 >
腰痛やおなかに張りを感じるときはできるだけ抱っこを控えましょう。流産や切迫早産のリスクがあるときは医師の指示に従います。
横に座ってスキンシップしながら話しかけるだけでも、上の子は十分にママの愛情を感じられまず。
また、「ママ、おなかがちょっと痛いの」など、どうして抱っこできないのかを上の子にきちんと説明してあげるといいでしょう。上の子がまだ小さくても、きちんと理由を話してあげることは大切です。
授乳はどうする?
妊娠が判明すると、流産が心配だからと上の子の断乳をするママがいますが、医学的には、授乳が初期流産の原因になることはありません。上の子の気持ちが不安定にならないようにするためにも、ママが無理なく続けられるのであれば授乳は継続して大丈夫です。
妊娠中期以降も早産の兆候がなければ、授乳の継続は可能。かかりつけ医に上の子に授乳していることを相談し、医師の指示に従いながら授乳を続けてください。
WHOが2歳までの授乳を奨励していることもあり、年子の場合は上の子と下の子の授乳期間が重なることが考えられます。その場合は、上の子と下の子を同時に授乳する「タンデム授乳」という方法もあります。海外ではよく行われている方法です。
2人同時に授乳してもいいですし、時間差で授乳してもOK。どちらの方法も、下の子に必要な量を与えられるように、下の子を先に飲ませてください。
上の子が1歳を過ぎて離乳食をよく食べるようになっていたら、授乳は栄養をとるというよりも、スキンシップとしての意義が強くなっていると思います。
おっぱいを飲みたいという上の子の気持ちに寄り添って授乳しつつも、おっぱい以外のスキンシップをたっぷりしてあげる、ほかの楽しいことを見つけてあげる、絵本を読んであげるなど、上の子が自然に卒乳できるように働きかけることもしてみましょう。
ママのつわりがひどいときは?
つわりでつらくても、日中は上の子と2人きりだから上の子の相手をしなければいけない、というママがほとんどだと思います。「上の子のために外遊びに行かなくちゃ」と無理に頑張らなくてかまいません。
手遊びやお絵描き、お気に入りのおもちゃで遊ぶなどの室内遊びを、ママがつらくない範囲でしてあげればよいのではないかと思います。座るのもつらいときは、一緒に寝転んで遊ぶのもいいでしょう。
室内遊びだけだと飽きてしまう場合も、無理して公園まで行かなくてOK。ベランダや庭でシャボン玉遊びをしたり、プランターの花に水やりするなど、ちょっと家の外に出て遊ぶだけで上の子の気分転換ができます。
つわりは長く続くわけではなく一時期のことなので、そのとき無理なくできることをすればいいのです。
ちなみに、少し外の空気を吸ったほうが、ママのつわりもやわらぐかもしれません。
周囲の人に頼ることも考えて
年子の妊娠中および出産後は上の子もまだまだ赤ちゃんなので、ママ一人で乗りきるのはとっても大変。パパやばあば・じいじなど周囲の人に助けてもらいましょう。
週末に上の子を外遊びに連れていってもらって思い切り体を動かすと、平日は室内遊びだけでも、上の子のストレスがたまりにくくなります。遊んでもらっている間に、ママはゆっくり休みましょう。肉体的にも精神的にも負担がかなり違ってきます。
パパが単身赴任中や実家が遠くて頼れないなどの場合は、保育園の一時保育や地域のファミリーサポートを利用するのも手。どちらも急には利用できないので、「利用することがあるかも」と思ったら、早めに登録を済ませておきます。
年子の妊娠・出産の気になることを解決しよう
年子を希望する場合、いつからセックスが可能なのか気になりますね。また、年子の妊娠・出産は心配になることがほかにもいろいろあります。
疑問や不安を解決して、明るく楽しく年子の妊娠・出産を迎えましょう。
セックスは産後8週間くらいしたらOK
産後の出血が落ち着くのは6週間後くらい、セックスを始められるようになるのは8週間後くらいからです。まだ上の子の育児が忙しい時期ですので、多くのママが積極的に次の妊娠を考えられるようになるのは半年くらいしてから、場合によっては1年くらいたってからだと思います。
「年子で生みたい!!」とこだわりすぎると、かえってうまくいないことがあります。
「年子で生まれたらラッキー」くらいのおおらかな気持ちで、次の妊娠を待ちましょう。
< 上の子が帝王切開の場合 >
産後1ヶ月ごろには見た目には傷が治っていますが、子宮には傷があるので、次の妊娠は1年くらい開けてほしいです。
上の子が帝王切開だと次の妊娠も帝王切開になることが多く、最初の帝王切開の際の子宮の傷が完全に癒えてから次の出産を行わないと、リスクが高くなるからです。
年子の妊活・出産Q&A
Q. 上の子がまだ卒乳していません。妊娠はできないでしょうか。
A. 授乳していても妊娠は可能です
上の子が卒乳していなくても、月経が再開して排卵していれば妊娠は可能です。次の出産まで上の子が母乳を飲んでいると、乳管のとおりがよく、母乳が出やすくなります。
上の子が飲みたがっていて、ママも授乳がつらくないのであれば、あえて卒乳しなくてかまいません。
Q. 年子にすると、下の子の出産がラクだというのは本当ですか?
A. 年子だからラクとはいえません
一度経腟分娩を経験していると、一般には陣痛開始から出産までの時間が短くなります。そのため、苦しい時間は短くなるとは言えますが、それは「年子だから」ということではありません。
Q. 年子だとお産の進みが早くなったり、後産(あとざん)がきつくなったりなるのでしょうか
A. 年子だからではなく2人目だから起こることです
一度出産を経験したママは、お産の進みが早くなることはあります。また、2人目は1人目より後陣痛(こうじんつう)が強い傾向にあります。どちらも、「年子だから」ではなく「2人目だから」起こることです。出産に関しては、年子だから何かが変わることはありませんよ。
お子さんを年子で出産した先輩ママたちの体験談を紹介します
「1歳3ヶ月差の男の子2人です。下の子が生まれても赤ちゃん返りはなかったし、2人同時に泣くこともあまりなかったように思います。どっちもまだ赤ちゃんって感じだったので、ミルクを飲めば寝るし、おむつも2人一緒に替えていたように思います。」
「1人目がなかなかできにくく、早めに妊活を始めて、運よく1歳7ヶ月差の年子を授かりました。年子育児がとても不安でしたが、なんとかなります! 年が近いと一緒に遊ぶようになるのがいちばんのメリットかなと。私は年子でよかったって思いますよ。」
「結婚が遅くて1人目が37歳での出産でして、どうしても2人産みたくて年子をねらいました。結果、1歳半差で2人目が産まれました。 2人授かって幸せでしたが、小さいころはやはり大変であまり記憶がありません。」
年子の妊娠・出産、育児はママの心身への負担が心配になりますが、年子の特徴を理解して対応すれば、切り抜けられそうですね。
ただし、まず上の子の育児を軌道に乗せることと、ママ自身の体調を整えることを優先して考えましょう。そして、年子で授かった場合はまわりの方にサポートしてもらうことが大切です。
(取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部)
※文中のママたちのエピソードはすべて、口コミサイト「ウイメンズパーク」の投稿からの抜粋です。