心と体をはぐくむ基本は「早起き・早寝・朝ごはん」【日本外来小児科学会リーフレット検討会より】
夜更かしをする子どもが増えています。海外に比べても日本には夜更かしの子どもが大勢います。
夜更かしは体調不良や病気のもとになりますので、眠りの基本をしっかり理解して、子どもの眠りを良質なものにしていきましょう。
この情報は「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の小児科の先生方がお母さん・お父さんに伝えたい内容を「たまひよ」と一緒にまとめたものです。
体のはたらきは昼と夜とで大違い
子どもの体温は朝が低く、昼間に上がります。夜になって体温が下がり始めるとメラトニンという眠けを誘うホルモンがはたらきだします。眠りに入ると成長ホルモンが出てタンパク質をつくり、骨を伸ばします。自律神経がおなかを動かしてうんちを肛門(こうもん)に送ります。心臓の動きはゆっくりとなって、血圧は下がります。
朝が近づくと、一日活動するというストレスに備えるステロイドホルモンが出てきます。そして目覚めると血圧が上がり、脳や筋肉に血液が送り込まれ、体を動かす準備をします。このように子どもの体のはたらきは、昼と夜とで大違いです。
それには生体時計がかかわっています。
生体時計とは?
生体時計は脳にあります。地球の1日は24時間ですが、生体時計の1日は24時間10分ほどといわれています。夜いつまでも明るいところで過ごしていると、生体時計の周期はさらにどんどん長くなり、地球時間とのズレが大きくなります。朝の光を浴びて、毎日生体時計の周期を短くして地球時間に合わせます。
早起きが元気のもと
生体時計の1日のほうが長いので、このままほうっておけばどんどん生活リズムがずれて、夜更かし朝寝坊になります。「子どもは夜になったら眠るもの」とよく言われますが、これは生体時計の性質からすると正しくありません。では生活リズムを整えるにはどうしたらいいのでしょう。昨日まで夜の0時に寝ていた子どもを、今日から午後8時に寝かせるのは大変です。
大切なのは朝の光です。生活リズムを整えるには早寝でなく早起きからはじめましょう。そして朝ごはんで燃料補給し、昼間は元気に活動させましょう。疲れれば早寝になります。そして早寝で早起きな子どもほど、きちんと朝食をとります。朝食は生活リズムを整えるうえでも大切なことがわかってきています。
子どもの生活習慣の基本は「早起き・早寝・朝ごはん」です。
生体時計と地球時間がズレるとどうなるの?
生体時計と地球時間がズレると、昼夜の区別を体ができなくなります。これはいわば慢性の時差ぼけ状態です。食欲が落ち、便秘になります。午前中なのに眠くなり、元気も出ず、体を動かさなくなります。夜になっても眠くなりません。寝不足です。するとまた昼間に眠くなり、体を動かさなくなる悪循環です。寝不足では血圧が上がり、血糖値が上がり、太ります。寝不足では体の抵抗力は低下し、脳もうまく動きません。
いくら勉強しても睡眠時間を削っては、成績が上がらないことはさまざまな調査で証明済みです。また体を動かさないと、心を穏やかにする神経伝達物質(セロトニン)のはたらきも悪くなり、イライラしたり、気持ちがめいったりします。
体温が下がって眠くなる
赤ちゃんは眠くなると首筋や手足がぽかぽかします。これは体の表面の血管を広げて、体温を下げるために熱を逃がし始めたからです。寝る前に熱いおふろに入ると、せっかく下がり始めた体温がまた上がり、寝つきにくくなります。寝る前に入るなら、ぬるめのおふろがおすすめです。
小さい赤ちゃんほど何度も眠りが浅くなる
眠りには浅い眠りと深い眠りとがあります。大人ではこの二つの眠りは約90分の周期で繰り返しますが、この周期は低年齢ほど短いのです。生まれたばかりは40分、1歳で50分ほどといわれています。必ずしも寝ついたら朝までぐっすり眠るわけではありません。
よいっぱり、なかなか寝ないけど、どうしよう?
入眠儀式(寝る前のルーティン)を編み出しましょう。これは寝るまでの「段取り」です。眠りはとても無防備で危険な状態です。安心できなければ眠れません。だから寝るまでの段取りはとても大切です。「本を読む」、「音楽を聴く」、さらには「寝巻きに着替える」、「翌朝に着るものを枕元にそろえる」もりっぱな「入眠儀式」でしょう。眠る前に「お休みツアー」として、家の中の主な物(テレビ・冷蔵庫・洗濯機など)に「お休み」を告げて回るのが効果をあげている家庭もあります。子どもに合ったすてきな儀式を考えてください。
お昼寝の見直しも大事です。夕方5時前までお昼寝をして、夜の8時にまた寝てもらおうと思ってもそれは無理。お昼寝を早めに切り上げることも生活リズムを整える上では大切です。
眠りが浅くて夜泣きするけれど、どうしよう?
小さい赤ちゃんほど、しょっちゅう眠りが浅くなるのでしたね。そんなとき赤ちゃんは夢をみているのかもしれません。とくに毎晩同じころに泣いたり、眠りが浅くなるときにはその可能性が大です。こんなことも知っておくと、「また夢を見ているのかな?」と多少余裕を持つことができますね。
子どもは寝て食べて、初めて活動(遊びや勉強)できる動物です。眠りというとついつい眠らせることばかり考えてしまいますが、十分な活動が眠りや食欲をよび、規則的で楽しい食事が活動と眠りのみなもとです。
眠りに悩んだら食事や遊びについても見直してください。それでも解決できなかったら、身近な小児科医に相談をしてください。相談することで、それまで気づかなかったことに思い当たることもよくあります。でもいちばんすてきな解決策はきっとお母さん・お父さんが編み出してくれるに違いありません。
なお、もっと勉強したい方は、早起きサイト をどうぞ。
(文/日本外来小児科学会 リーフレット検討会 構成/ひよこクラブ編集部)
■監修/日本外来小児科学会 リーフレット検討会
日本外来小児科学会 リーフレット検討会は、子どもの病気、健康、安全、生活など、子どもを取り巻くすべてのことがらに対してリーフレット制作に取り組んできました。この活動の1つとして、保護者や子どもにぜひ知っておいてほしい情報を記載したコンテンツを「たまひよ」と一緒に作成し、オンラインで発信していきます。
日本外来小児科学会は1991年に設立された学術団体です。