死亡保障額の目安は?共働き家庭の生命保険入門【プロに聞く】
大手生命保険会社、ネット保険、保険の代理店・・・。生命保険の加入や見直しをしようとしても、選択肢がたくさんありすぎて、どこに相談すべきか、何が必要なのか、よくわからない…、という人も多いのではないでしょうか。そこでファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんに、共働き家庭向けの生命保険についてアドバイスをもらいました。
子どもが生まれたら「死亡保障」の見直しを
「子どもが生まれたら見直したいのが、生命保険です。生命保険は、もしもの時に家族の生活を支えてくれます。結婚や出産、子どもの成長に合わせて、生命保険を見直すことはとても大事です」と、豊田眞弓さん。
では、生命保険の死亡保障は、いくらくらいを目安に加入すればいいのでしょう。
Q共働き家庭の場合、死亡保障額はどれくらい必要?
A. 夫婦ともに正社員の場合は、夫婦それぞれ1500万〜2000万円を目安に
「生命保険の本来の目的は、子どもの教育費や残された家族の生活費の補填です。だからといって、高額な保障にすればいいというわけではありません。
死亡保障額は、持ち家か賃貸か、夫婦の就業形態、年収などによって変わります。
例えば、持ち家で夫婦それぞれ正社員、収入もほぼ同じという場合は、家計を夫婦で支え合っているので、夫婦それぞれ1500万〜2000万円くらいが目安です。
夫が正社員で妻がパート勤務の場合は、夫の死亡保障額は3000万円、妻は500万円くらいが目安です。
持ち家の人で住宅ローンを組み、団体信用生命保険に加入している場合は、ローンを借りている人が亡くなるとその分のローンが帳消しになりますが、賃貸の場合は、亡くなった後も住宅費用が必要になります。そのため、賃貸の人は、それぞれの保障額にプラス1000万円になります。
子どもが2人以上であれば、上記の死亡保障に教育費として人数×300万〜500万円を上乗せしましょう。
生命保険には、一生涯保障が続く「終身保険」と、10年〜20年などの一定期間だけ保障がある「定期保険」、亡くなった時や高度障害の時に年金のように毎月支払われる「収入保障保険」があります。
最近注目されている収入保障保険は、掛け捨てタイプです。
例えば、65歳まで毎月10万円受け取れる契約をした人が、45歳で亡くなると20年間毎月10万円が支払われます。けれど62歳で亡くなると、毎月10万円が支払われるのは3年間となります(5年など、最低保障期間が設定されていることもあります)。このように、掛け捨てタイプの収入保障保険は、年数の経過とともに受け取れる保険金の総額が減っていく仕組みになっています。このため、定期保険よりさらに手頃な保険料になっています。
ファミリー世帯の生命保険の死亡保障は、教育費がかかる時期までを手厚くし、教育費がかからなくなれば減額するという方法でいいでしょう。終身保険は保険料が高額になるため、加入する場合は最低限に抑え、収入保障保険で高額な保障を補うのが一般的です。
すでに生命保険に加入している場合、これまで説明した死亡保障額を目安に、多すぎるのであれば減らして、足りないなら増やして見直しましょう」
Point
・高額保障は、収入保障保険で割安にカバーを。
・被保険者が非喫煙者で、BMIが一定範囲の健康体の人なら保険料が安くなる商品も。
・死亡保障額は、子どもの成長に合わせて見直しを。
・死亡保障の表は、あくまでも目安です。実際には個別に試算しましょう。
Q団体信用生命保険に加入していたら、生命保険は必要ないのでは?
A.貯蓄が十分にあれば不要ですが・・・
「持ち家(住宅ローン返済中)で共働きの場合、団体信用生命保険に加入し、子どもの教育費や生活費をまかなえる十分な貯蓄があれば、生命保険は必要ないと考えられます。しかし、十分な貯蓄がない人は、生命保険の保障で補う必要があります。
また、最近は夫婦で住宅ローンを組んでいるケースが増えています。
この場合、どちらか一方が亡くなった時に、夫婦の住宅ローンが全て帳消しになるタイプの団体信用生命保険に加入していればいいのですが、そうでないと一方の住宅ローンは残ります。
その場合は、生命保険の死亡保障額にお互いのローン分をさらに上乗せする方法もあるので、保険料と合わせて検討してみてはいかがでしょう」
Point
・貯蓄が十分にある場合を除き、団体信用生命に加入しても死亡保障は必要です。
・妻(夫)の持ち分の住宅ローンが残る団体信用生命保険の場合は、お互いの生命保険の死亡保障額に住宅ローン分をプラスしておくと安心。
生命保険の死亡保障は、万が一のことがあったときに、家族のために残すためのもの。保障額が少ないと不安になりますが、多いと保険料が高くなり、かえって日々の家計の負担になります。家計と家族にあった保障額を目安にして、夫婦共に見直すことが大切ですね。
(文・酒井範子/bizmom編集部)
監修/豊田眞弓さん
FPラウンジ代表。ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー。個人相談業務のほか、雑誌や講演などで活躍。著書に「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)「親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本」(アニモ出版)など多数。
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