医療保険を選ぶポイントは?共働き家庭の医療保険入門【プロに聞く】
家族が増えたら見直したい、医療保険。
共働き家庭の保険入門、前回の生命保険に続き、今回は医療保険について、ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんにアドバイスをもらいました。
20代の頃に入った医療保険のまま見直していないという人も多いのではないでしょうか。
「入院の短期化や日帰り手術なども増えています。古い医療保険は保障内容もよくチェックしましょう」と、豊田眞弓さんはアドバイスします。
公的な医療保険制度を利用すれば、医療保険は不要なのでは?と思っている人は要注意!医療保険を見直したい人も、一緒に保険について考えてみましょう。
Q 正社員は傷病手当金もあるから、医療保険は必要ないのでは?
A.十分な貯蓄があれば、医療保険は必須ではありません
「会社員の場合、『傷病手当金(※1)の給付と、高額療養費という公的な制度(※2)を利用することができるので、民間の医療保険は必要ないのでは?』と思う人もいるでしょう。
確かに会社員の場合、数日の入院であれば傷病手当金や公的な保険、高額療養費制度でまかなえることもあります。
ただ、傷病手当金で給付されるのは標準報酬日額(※3)の2/3で、給料の全額が補償されるわけではありません。
また、高額療養費制度により医療費の負担が軽くなりますが、適用にならない分の負担は残ります。入院時の「食事代」や「差額ベッド代」「先進医療」などは高額療養費の対象外で全額自己負担です。
そして、「見舞いに通う家族の交通費」や「入院中の日用品、衣類にかかる費用」は、当然ながら自己負担になります。さらに自分が入院している期間中、子どもの世話をお願いするためのベビーシッター代など、まとまったお金が必要になることも。
十分な貯蓄があって医療保険が不要な場合は別ですが、入院が長引けば収入が減り、さらに支出が増えるので、いざという時の備えとして、夫婦ともに日額5000〜10000円程度、入院給付金がでる医療保険に加入しておいてもいいのはないでしょうか。医療保険は、入院が増える高齢期に役立つというケースが多いです」
※1傷病手当金…勤務先の健康保険に加入している人が、病気やけがで仕事ができなくなり、連続して4日以上休んだ時に、標準報酬日額の2/3の相当額を最長1年6カ月までもらえます。被保険者であればパートでももらえます。
※2高額療養費制度…医療機関や薬局で支払う1カ月の医療費が一定額を超えた場合、その超えた分が還付される制度。負担の上限額は、年齢や収入によって変わります。
※3標準報酬日額…継続した12カ月間の各月の標準月額を平均した額の、1/30相当額。
Q 医療保険を選ぶポイントはある?
A. まず入院給付金と手術給付金をチェックして
「医療保険に加入するときにまずチェックしたいのが、入院給付金と手術給付金です。入院の短期化が進んでいるほか、医療技術が進んだことで、手術をしても日帰り入院や通院治療というケースも増えています。
今の医療保険は、ほとんどが入院1日目から入院給付金を受け取れるタイプですが、以前は入院してから5日や8日を経過してからでないと入院給付金を受け取れないものが多くありました。また、入院給付金の支払い限度日数もタイプによって異なります。現在加入している人は自分の保険について、いつから入院給付金がもらえるのか、1入院で何日間保障されるのかなど、念のため確認を。
入院保障は、入院期間が短くなる傾向にあるため、一度の入院で30日〜60日であれば十分かと思います。
手術給付金は、手術によって5、10、20万円などと受け取る金額は変わりますが、日帰り手術でも受け取ることができるものになっているかのチェックを。
ただ保険によっては、約款に記載された手術しか支給されないものもあるため、できれば公的医療保険が適用となる手術で支払われるタイプだとより安心です」
Q特約はつけた方がいいの?
A.先進医療や三大疾病特約は、あれば安心
「特約には、先進医療や三大疾病、女性疾病をはじめ、さまざまなものがあります。中でも、”がん”は2人にひとりはかかると言われますし、治療が長引くことが多いので特約をつけるか、単体のがん保険に入った方が安心でしょう。ただし、特約をつければ保険料は上がるので、必要と思うものを吟味して選ぶことが大切です。
先進医療特約は、陽子線治療や重粒子線治療などといった、数百万円かかるがんの先進医療を受けたときの技術料が実費保障される上、特約保険料が月100円前後と安価なので、万が一のためにつけておいてもいいでしょう。
がん、脳卒中、急性心筋梗塞の三大疾病は、入院や治療が長引くことが多く、その後の生活に影響も大きい病気なので、思った以上にお金がかかるケースもあります。三大疾病特約は、リスクが高まる40代以降はあると安心です。
三大疾病特約の保障内容も、例えば心筋梗塞のみの場合もあれば、心疾患全般の場合もあり、範囲に差があるので、比較の際のポイントにしましょう。
がんについては、がんと診断された時に支払われる診断給付金(一時金)が出るかどうかが重要です。その一時金が一度だけのものもあれば、複数回から無制限にわたり払われるものがあります。入院や長い通院治療になることの多いがんは、何度も診断給付金が受け取れるものを選んだほうが安心です。
特約をつけるかそれぞれ単体の保険にするかは、予算と合わせて検討しましょう」
Q就業不能保障保険は、共働き家庭に必要な保険?
A.会社員には傷病手当もあるので、余力があれば検討を。
「就業不能保障保険は、ケガや病気で働けなくなった時の経済的なリスクをカバーするための保険です。比較的新しい保険ですが、収入減に備えた第二の医療保険として注目されています。
入院や治療で収入が減っても、住宅ローンや教育費、日々の生活費の支出はあるので、中には貯金を切り崩さなくてはならないこともあります。会社員の場合は収入の約2/3を傷病手当金でまかなえるものの、それではマイナスになる家計もあります。それを補えるのがこの保険です。加入期間も教育費がかかる時期など、一定期間で十分かと思います。
各保険会社によって、保険が支払われる条件などが異なるので、自分に必要な条件と保険料のコストを合わせて検討をしましょう」
保険は一度加入したら、そのままということも少なくありません。でも、出産や子どもの成長など、ライフステージに応じて保険を見直すことはとても大切。医療保険の保障内容も、年々新しいものが増えています。無駄な出費を抑えて、その時々に必要な保障を手に入れるため、この機会に一度見直してみてはいかがでしょうか。(文・酒井範子/bizmom編集部)
監修/豊田眞弓さん
FPラウンジ代表。ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー。個人相談業務のほか、雑誌や講演などで活躍。著書に「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)「親の入院・介護が必要になるとき いちばん最初に読む本」(アニモ出版)など多数。
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