男の子は? 女の子は? 赤ちゃんのおしっこ、ふく、ふかない問題【ママ泌尿科医】
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第10回。今回は、「赤ちゃんのおしっこよごれはふくべきか」について。専門家の間でも意見が分かれるこの問題に、岡田先生がズバリお答えします。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#10。
女の子ならふいて、男の子はふかない⁉ 「正解」はどこにも書いてない!
講座などで保護者の方から質問を受ける中で、「答えに悩む」質問がいくつかあります。
それは「医学的に結論が出ていない」ものや「教科書に書いていない」内容に関する質問。
私が聞かれて迷ったのが「赤ちゃんのおしっこのあと(おむつ替えの度)に毎回ふくべきですか」という質問です。
私は自分の子どもが男の子で、かつ「ふいあげてください」という指導も受けなかったので、当たり前のように「ふく必要がない」と考えていました。成人になっても男性は排尿のあとにふかない人も多いですしね。
一方で、「女の子の場合はどうですか?」と初めて聞かれたときに答えに窮してしまいました。その場で一緒にいた助産師さんに「助産院ではどのように指導していますか?」と聞いたら、「一応女の子はふくように指導していますが、理由を聞かれると…」とのお答え。
参加者の方々にも「うちは男の子だけど毎回ふいてる」「女の子だけどふいていない」「気が向いたときにふいている」など、さまざまなお答えが。
おしっこをふくのは、皮膚へのダメージが心配だから。でも、毎回だと…
インターネットで調べてみても、専門家の中でも「ふくべき派」「ふく必要ない派」どちらの意見も出てきます。
「ふくべき派」の意見としては、
おしっこにはアンモニアという成分が含まれていて、赤ちゃんの肌にとって刺激になる。したがって、ふき取らないと皮膚炎(おむつかぶれ)の原因になる。
「ふく必要ない派」の意見としては、
ふくという刺激自体が赤ちゃんの肌へのダメージとなる。おしりふきに含まれる化学成分が皮膚炎の原因になる。
最近ではおしりふきでも、刺激が少ないやさしい成分のものも出ているとはいえ、いずれも、赤ちゃんの皮膚へのダメージを心配しているという点において共通しています。
正解を求めて医学資料を探してみました。
ピンポイントでこのテーマを取り上げたものはありませんでしたが、赤ちゃんの皮膚炎について書かれた記事の中に、その原因として
・おしっこやうんちに含まれる成分
・おしりふきシートに含まれる化学物質
・ふくことによる機械的な刺激
・その他もろもろ(おむつ自体の刺激など含め)
が挙げられていました。
つまり、おしっこの刺激で皮膚炎になってしまうこともあるし、頻繁にふくことで皮膚炎になってしまうこともあるということ!
じゃあ結局どうすればいいの?
毎回ふかなくても大丈夫。おしっこと皮膚炎の因果関係は、はっきりしていません
専門家の間でも意見は分かれるようですが、私は「医師・助産師からの指示がない限り、おしっこ(おむつ替え)の度にふく必要はない」という立場を取ることにしました。
子どもの皮膚の強さも個人差があります。おまたの皮膚炎になったからといって、保護者の「ふいた/ふいていない」がどの程度関係していたのか証明することはできないし、必ずしもおしっこが関係しているとも限りません。
「なる前に予防してあげたい」という気持ちはとてもよくわかりますが、因果関係がはっきりしない予防のためにエネルギーを費やす必要はないかなと思います。
助産師や医師に相談し、皮膚の状態(かぶれ方)などから「おしっこをふいてあげて」と指導された場合のみふけばいいと思います。
ふくときは、強くこするのはNGです。やさしく軽く押さえる感じでふきましょう。これは男女問わず大人が排尿後にふくときも同じです。
「やるべきか、やる必要はないか」、専門家の間でも明確な結論が出ていない育児に関する疑問はほかにもあると思います。そんなときは、「保護者にとってラクなほう」という選択のしかたでいい。というのが私の意見です。
「やらなければいけないこと」は最小限にして、ママやパパの休息も大切にしてくださいね。
構成/ひよこクラブ編集部
「医師などから指示がない限り、毎回おしっこをふかなくてもいい」というのが岡田先生の意見。神経質になるあまり、親が疲弊してしまうことのないように心がけたいものです。次回もちょっと気になる性器にまつわる話をお楽しみに。