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「まさか、不妊の原因が自分に…」男性の不妊、その苦悩とは?【専門家に聞く】

自宅で話しているアジアのカップル
※写真はイメージです
kokoroyuki/gettyimages

政府が2022年度に導入をめざす不妊治療の公的医療保険の適用範囲の中に、男性不妊の治療も含まれるなど、男性不妊に対する認知度は高まってきています。しかし、男性ならではのさまざまなハードルがあり、その苦悩は軽視できません。不妊治療を受ける男性ために、どのようなケアが求められているのでしょうか。男性不妊について調査研究を行っている、東京医療保健大学看護学部看護学科准教授の朝澤恭子先生に聞きました。

渋々検査を受けたら不妊の原因が自分にあり…大きな衝撃を受ける

男性不妊は、精子の数や量に問題がある、性交渉ができない、精子がない(あっても出られない)、この3つが主な原因とされ、不妊治療が必要なカップルの48%に、男性側の要因があるといわれます。

――男性のほうに不妊の原因があるのではないか…と考えて、受診されるカップルはどれくらいいるのでしょうか。

朝澤先生(以下敬称略) その割合を調査したデータはないので、あくまでも私の個人的な感想ですが、患者さんにインタビューした経験、外来で話した経験から10%未満ではないかと思います。多くの男性は「パートナーにお願いされたから渋々受診した」というスタンスです。

――渋々受診して検査したら、不妊の原因は自分にあった…というケースが多いということですよね。そのとき、男性はどのような反応をされることが多いですか。

朝澤 多くの男性が相当にショックを受けていると思います。最初に説明したように、男性不妊の原因の多くは精子に問題があるのですが、男性は「精子=自分」ととらえる傾向があるようで、「精子に問題がある」言われると、自分を否定されたように感じてしまうようです。

――「自分に(自分にも)不妊の原因がある」と、想像していなかった事実をつきつけられ、ショックを受けた状態で治療が始まるケースが多いということですね。

朝澤 そうです。しかも男性は、女性よりも「不妊治療を行うことを職場関係者に知られたくない」と考える人が多い傾向にあります。自分が不妊であることを認めたくない、他人に知れられたくない、という気持ちが強いのだと思います。

――仕事関係者だけでなく、親や親せきなど身内の人にも知られたくないと考えるのでしょうか。

朝澤 そのようです。首都圏では受診や治療が他者に干渉されにくい環境にありますが、周囲の人との関係が濃密な地方では、「〇〇さんが△△の病気で病院に行った」などの情報が周囲に知れてしまう可能性があります。そのため、不妊治療をオープンにしたくない地方在住の男性の中には、県外の病院を受診するなど、苦労されているケースも少なくないようです。

「不妊治療はつらい。でもパートナーには言えない」と多くの男性が苦悩

「平成27年度厚生労働省子ども・子育て推進調査事業 我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究」で、朝澤先生が共同で研究発表された「男性不妊の看護に対する不妊症看護認定看護師の意識と実践」では、男性患者の「不妊治療のつらさ」が以下のように明らかになっています。

・治療を受けるパートナーの身体が心配である:66.2%
・精液所見を改善させる有効な方法の情報がない :66.2%
・仕事と治療の両立が難しい :55.4%
・治療の取り組みにカップル間の温度差がある: 52.7%
・治療施設が近隣に無く通院しづらい :52.7%
・治療費が高額で負担が大きい: 51.3%
・「治療がつらい」とパートナーに言いにくい: 43.2%
・子どもがいる人に対する羨望(せんぼう)がある:41.9%

――この調査から、男性がさまざまなつらさを抱えながら不妊治療を行っていることがわかります。また、治療のつらさをパートナーに打ち明けられない男性も多いのですね。

朝澤 「つらいけれど、子どもを強く望むパートナーにはとても言えない」ということのようです。

――男性側に不妊の原因がある場合、妊娠を望むパートナーに対して、かなりのプレッシャーを感じながら治療を続けているのではないかと思います。パートナーはどのように対応するのがいいと思われますか。

朝澤 私個人の考えになりますが、男性患者さんはデリケートなタイプが多く、落ち込んでいる場合が多いです。パートナーは、「受診してくれてありがとう」「あなたのおかげで治療が受けられてうれしい」と感謝の気持ちをさりげなく、そして継続的に伝えるのがいいと考えます。
また、精液検査の結果に一喜一憂せず、結果がよくなくても責めないであげてほしいです。たとえ結果がよくなくても、いい精子が数個いるだけで妊娠できるかもしれないからです。

――先生が不妊治療の現場で話を聞いたときには、「病院で精子を採取するのがつらい」という話も出たそうですね。これも男性ならではの悩みですね。

朝澤 私たち医療従事者はもちろん、パートナーも「治療の一環なんだから」と考えがちなのですが、それほど単純なことではなく、非常にデリケートな問題のようです。男性ならではの羞恥(しゅうち)心やつらさがあることを、パートナーは理解してあげてほしいです。

男性が相談しやすいスタッフもいる施設を選び、男性の心の負担を減らして

――不妊治療の現場スタッフは女性が多いでしょうか。その場合、男性は悩みを相談したり、弱音を吐いたりしづらいということは考えられますか。

朝澤 不妊治療の現場は女性看護師が多いです。とくに若い女性看護師には相談しづらい、と考える男性が多いようです。
でも最近は、男性の不妊症看護認定看護師がいるクリニックもありますし、男性の培養士(受精卵を育てたり、精子を凍結したりするスタッフ)も多くなっています。

男性患者さんの悩みは、治療がART(生殖補助医療)に進むと増えてくるため、男性の不妊症看護認定看護師や培養士がARTの前にミニ講義を行って質問を受けたり、個別相談を受けたりするクリニックもあります。

男性看護師、男性培養士、女性でもベテラン看護師には相談しやすいという男性からの意見も聞かれます。悩みを抱えたまま治療を続けるのは非常につらいですし、そのせいで、途中で治療をやめてしまうことにもなりかねません。男性が悩みを相談したり、弱音を吐いたりできる場所があることは非常に重要です。女性はもちろん男性へのフォローも充実した施設を選ぶことは、不妊治療を進めるうえで重要なポイントになるでしょう。

――「不妊治療は終わりがないからつらい」という話も聞きます。“治療のやめどき”について、2人でどのようなことを話し合っておくのがいいでしょうか。

朝澤 この話には正解がないので、私の個人的な考えを述べます。人工授精やARTが必要な段階になると、治療費の負担が大幅に増えるし、男女そろって受診する機会も増えます。この段階になったら、「何年間治療するか」「治療費にいくらまで使うか」「どの治療段階まで行うか」「ARTは何回までトライするか」といった期間・費用・治療内容・回数を2人で話し合い、お互いの意見を一致させ、理解・協力することが必須だと思います。

この部分をしっかり話し合っておくと、不妊治療に端を発した関係性の悪化、さらには離婚といった、最悪の事態になるのを防げるのではないでしょうか。

――現在、不妊治療を行っている男性にアドバイスをお願いします。

朝澤 不妊治療はつらいことがあるかもしれませんが、一つの目標に向かって協力することで、これまで以上に絆が深まるカップルも多いです。飲酒や喫煙、サウナなどNGと言われていることも、我慢しすぎるとストレスの原因になり、かえってよくありません。たまにであれば、飲酒・喫煙は少量、サウナは短時間楽しんでも影響は少ないので、上手に気分転換してください。どうしてもつらいときは、一度治療を休み、気持ちを切り替えて再度始めるのもありです。

また、男性スタッフやベテラン看護師など、声をかけやすいスタッフに気持ちを聞いてもらってください。医療スタッフはあなたの味方です。遠慮せず相談してください。

取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

お話・監修/朝澤恭子(あさざわきょうこ)先生

男性の不妊治療は、男性ならではの苦悩があることをパートナーが理解することが大切なようです。そしてよく話し合い、協力しながら治療を進めていきましょう。

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