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生まれてすぐの赤ちゃんに起こる“新生児黄疸”って何?【小児科医が解説】

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赤ちゃんの泣く
※写真はイメージです 
kuppa_rock/gettyimages

生後2カ月の赤ちゃんを連れて、初めての予防接種にやってきたお母さん。生まれてすぐに黄疸(おうだん)が出たことを心配している様子です。そこで陽ちゃん先生は、新生児黄疸(おうだん)が起こる理由や治療法について、ていねいに説明し始めます。

赤ちゃん、ママやパパにいつもやさしく寄り添う陽ちゃん先生こと、小児科医の吉永陽一郎先生が、日々の診察室で起こった、印象深いできごとをつづります。先生は育児雑誌「ひよこクラブ」でも長年監修として活躍中です。「小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより」#33

肌や白目が黄色っぽくなる“新生児黄疸”って?

その日来院したのは、2カ月の赤ちゃんと、そのお母さん。初めての予防接種で、クリニックを訪れました。予防接種前に何か聞きたいことがあるようですので、診察室に入ってもらいました。

――今日は初めての予防接種ですね。生後2カ月は、ワクチンデビューの理想的なスタートです。

「それが、この子は生まれたときに異常があったんです。少し心配で…」

――いったい何があったのでしょう?

「黄疸(おうだん)が出て、何か光の箱のようなところに入れられました」

黄疸とは、赤血球の中に含まれるビリルビンという黄色い物質が皮膚や目にたまり、それらの場所が黄色く見える状態を指します。

――なるほど。黄疸だったのですね。そのあと、違う治療が必要だとか、退院後にまた検査をするとは言われなかったのですか。

「はい。そういったことは言われていません」

赤ちゃんの肌は、うっすらと黄色みが残っているようですが、白目は黄色くありません。うんちの色も通常の濃い茶色です。

――新生児黄疸(しんせいじおうだん)だったのですね。もともと大きな病気があったのではなかったのでしょう。

「でも、どうして黄疸になったんでしょうか?」

――それが赤ちゃんの特徴でもあるんです。

生まれる前や、生まれた直後の赤ちゃんの血液は、赤血球が多くて濃いものです。お母さんの胎盤からもらった酸素を効率よく全身で使うためかもしれません。
その赤血球が次々に壊れて、ビリルビンという成分に変わり、肝臓で処理されます。ところが、赤ちゃんの肝臓は、まだ機能が十分でなくて処理しきれないのです。それで身体には一時的にビリルビンがたまります。これが黄疸の多い原因です。通常は、1週間から2週間程度で自然に消えます。

「治療しない子もいるんですよね。自然に消えるのなら、なんであんなまぶしいところに入れられたんでしょうか」

――検査をしてみて、血中のビリルビンがあまりに多いと、黄疸が強くなります。そして、万が一濃すぎると、脳に影響がある可能性があるんです。その可能性をなくすために、早くビリルビンを下げる治療をすることがあります。

「あれは何か特別な光なんですか?」

――いえいえ、特別な光ではないんです。この効果は、1958年に偶然見つかったそうですが、窓際に寝かせられて日光に当たっていた赤ちゃんは、黄疸が早く改善することがわかったんですね。
そこで光を当てようということになり、蛍光灯や、最近では熱を持ちづらい発光ダイオード(LED)などが使われているんです。

「どうして、光を当てたら黄疸が消えるんでしょうね。日焼けして濃くなってしまいそうですけど」

――ビリルビンにはいろいろな種類があり、光を当てると水に溶けやすいタイプに変わって、体の外に捨てやすくなるそうです。

「じゃあ、日光に当ててあげたほうがいいんですね」

光を浴びることは大切ですが、直射日光に当てるのは、すすめられません。治療が必要だと言われない限り、普通に部屋に入ってくる日差しで十分です。 

病院で行う治療としては、光線療法に加え、点滴などで十分水分を与えることが基本です。それでも改善が不十分なときは、血液をビリルビンの少ないものに変える(交換輸血)などの治療を行います。これにより、ビリルビンが濃いことで脳に障害が残る核黄疸(かくおうだん)になる子は減っています。

母乳授乳の場合、しばらく黄疸が続くことも

「黄疸はいつまで続くんでしょうか」

――今は母乳で育てていらっしゃるんですよね。しばらく続いているのは、母乳性黄疸(ぼにゅうせいおうだん)の影響もあるでしょうね。

「どうして、母乳だと黄疸になるんですか?」

――生まれてすぐのころは、お母さんの母乳の出が十分でなかったり、赤ちゃんの飲む力が弱かったりして、母乳の摂取不足で身体にビリルビンがたまることがあるんです。
一方で、生後数週間を越えて、十分おっぱいが飲めているのに黄疸になる子もいます。母乳の成分が、肝臓からビリルビンが捨てられるのを邪魔すると考えられています。しかし、どちらも多くの場合は自然に消えていきますから、心配はいりません。黄疸が強いように感じたら、かかりつけの先生に相談するといいですね。

「じゃあ、母乳はやめなくていいんですね」

――はい、もちろんこのまま続けましょう。

「ちなみに、予防接種の問診表に異常があったかどうか書くところがあるんですけど、黄疸のことは書いたほうがいいですか?」

――初めて予防接種を受けるときには、伝えたほうがいいでしょう。その次からは、もう書かなくてもいいと思います。

文・監修/吉永陽一郎先生  構成/ひよこクラブ編集部 

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