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【小児科医リレーエッセイ 17】 残暑の「子どもの熱中症」をあなどらないで!

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女の手と太陽
LFO62/gettyimages

「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から子育てに向き合っているお母さん・お父さんへのメッセージをお届けしている連載です。今回は長年にわたり神戸市教育委員会の「熱中症対策」を行っている、兵庫県・医療福祉センターさくらの院長・服部益治先生です。ウィズコロナでマスク着用の問題もあるなかでの、残暑の熱中症対策についてです。

脱水がすすんで汗で体温を下げられなくなり、ぐったりするのが「熱中症」

熱中症は、以前「熱あたり」と呼ばれていました。「食中毒」を「食あたり」と呼ぶのと同様です。イメージは「熱中毒」でしょうか。その後、「日射病(熱中症の軽症)」「熱射病(熱中症の重症)」と呼ばれ、10年前ごろから「熱中症」が周知されました。

暑くて体温が上がると、汗を出して体温を下げようとします(気化熱効果といいます)。でも、汗がどんどん出ていきますと、体内の水分(体液)が減少し、脱水状態になります(脱水症)。汗は塩っぽいので、塩分も失われますので「脱塩水症」(私の造語)のほうが正しいイメージでしょうか。
そして、脱水症がすすむと、汗の出が悪くなり、体温を下げることができなくなります。そのため体温が上がりますと、ぐったりしたり、意識を失ったり、けいれんが起きたりすることもあります。これが熱中症です。

「あれ、熱中症?」と思ったら、気温・湿度・日光の強さなどを確認しましょう

まず身体が熱くないか、受け答えができているのかを確認してください。体温上昇で心配なのが脳のダメージです。体温計があれば体温をチェックしましょう。風邪症状(鼻水・せき・痰)がないのに、5月から10月で体温38℃以上の場合は熱中症を疑いましょう。汗の出方が少ない、皮膚が乾いている、おしっこの量が少ないなども要注意サインです。

もちろん、いる場所の環境をチェックしましょう。熱中症は気温だけを注意していてもダメです。気温をはじめ、湿度、日光や風の有無などで総合的に判断しましょう。これが「暑さ指数(WBGT)」で、湿球黒球温度と呼ばれ、熱中症予防のための指標です。①湿度、②日射・輻射など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指数なのです。
天気予報の最高気温だけでなく、この暑さ指数をお住まい地点で調べ、日々の生活や活動の目安にするといいでしょう(https://www.wbgt.env.go.jp/graph_ref_td.php)。

熱中症は3つに分類されます。「意識がない、体温が異常に高い」時には救急車を!

熱中症のI度は、気分不快・立ちくらみ・めまい・失神(熱失神といいます)、などの症状と筋肉痛・筋肉硬直<こむら返り>、手足のしびれ(熱けいれんといいます)などがあります。
乳幼児の場合には、活気なく、ぐったりし、食べ気もみられないなどです。
II度は、頭痛・吐きけ・吐く・ぐったりして力が入らない・ぼぅ~としている(熱疲労といいます)などの症状です。
III度は、意識がない・全身けいれん・手足が動かない・異常高温(熱射病といいます)などの症状です。

Ⅰ度は、現場の応急処置として、まず涼しい環境(風通しのいい日陰や、できればクーラーが効いている室内)への避難です。次に脱衣と冷却です。すなわち衣服を脱がせて、体から熱の放散を助けます。露出させた皮膚に水でぬらしたタオルやハンカチをあて、うちわや扇風機であおぐことにより体を冷やします。冷やした水のペットボトルや氷のう等を首のつけ根の両わき、わきのした、両足のつけ根(股関節部)に当てて、皮膚の下を流れている動脈の血液を冷やすと効果的です。

意識があり、自分で飲めるようであれば、水分・塩分の補給です。大量の発汗があった場合には、汗で失われた塩分も適切に補える経口補水液が最適です。ただし、呼びかけや刺激に対する反応がおかしい、答えがない(意識障害)の時は誤って水分が気道・肺に流れ込む可能性がありますので、口から水分を飲ませるのは禁物です。
Ⅱ度以上は病院への搬送しましょう。また「いつもと違う」、「何か変!」などの場合も、ためらわずに救急車を呼びましょう。

熱中症はゼロ可能な病気です。出かける際には予防対策をしましょう

出かける時は、帽子を着用し、水分(発汗が多い可能性が考えられる時は経口補水液)、保冷剤を持参しましょう。大人は日傘の利用もおすすめです。
感染予防のマスク着用は日本小児科学会から2歳まで危険で、不要としています。理由は、乳幼児の呼吸器の空気の通り道は狭いので、マスクは呼吸をしにくくさせ、呼吸や心臓への負担になります。マスクそのものやおう吐物による窒息のリスクが高まります。顔色や口唇色、表情の変化など、体調異変への気づきが遅れるなどです。またマスクによって熱がこもり熱中症のリスクが高まります。2歳以上の子どもであってもマスクを着用する場合には保護者が注意をする必要があります。もちろん保護者と共にソーシャル・ディスタンスを保つことも大切です。

9月以降は暑さによる心身の疲れ(夏バテ)があり、気温が下がってきても熱中症の危険はあります。油断なく、バランスのいい食事、適切な睡眠で「実りの秋」を迎えましょう

いろいろな情報を知りたい方は、以下のサイトも参考にしてみてください。
STOP熱中症 『教えて!「かくれ脱水」委員会』サイト
環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」サイト

文/服部益治先生(医療福祉センターさくら・院長)

Profile
医療福祉センターさくら・院長。兵庫医科大学特別招聘教授(小児科学)。
日本小児科学会専門医、日本腎臓学会専門医、兵庫県小児科医会顧問ほか、専門は小児科全般、腎臓病、夜尿症、予防接種、子どもの傷害(事故)予防など。次世代を託す子どもたちに夢大きく心豊かに育ってもらうため、そして素敵な地球を手渡すため活動中。

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