「子育て世代が気になるつみたてNISA」をほったらかし投資家に聞く
連載10回目。今回のテーマは、「つみたてNISAって何がいいの?」。
将来のお金が不安。投資も気になるけど、子育てが忙しくて手が回らない……という新米ママ・パパに伝えたいのが、手間をかけずにできる、ほったらかしインデックス投資。
ブログで投資経験を綴り、著書も出版、インデックス投資家のバイブル的存在として知られる投資ブロガー・水瀬ケンイチさんが、超カンタンガイドしてくれます。「新米ママ・パパむけインデックス投資講座。教えて!ほったらかし投資家・水瀬さん」第10回。
インデックス投資のためにあるような制度です
こんにちは!水瀬ケンイチです。今回、お話ししたいのは『つみたてNISA』について。おそらく、この名称は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実はこの『つみたてNISA』、インデックス投資をするなら使わなきゃ損!な、超お得な国の制度なんです。
何がお得かといいますと、運用で得た利益にかかる税金がなんと非課税!しかも、投資方法はその名の通り「つみたて」限定なので、一度始めたらほったらかしでよく、忙しいママ・パパにうってつけです。
ほかにも、子育て世代に嬉しいメリットがたくさんありますので、ひとつずつ解説しますね。
利益が丸ごと受け取れる!
ひとつ目のメリットは、先ほどもお伝えしたように「運用で得た利益に、税金がかからない」ということ。
通常、株式や投資信託などで得た利益には、約20%の税金がかかります。例えば、100万円投資して、50万円儲かったとしたら、儲けの50万円の約20%に当たる10万円が税金として取られてしまうのです。
利益にかかる税金なので、元金が減ってしまう訳ではありません。でも、リスクを負ってコツコツ投資して、苦しい思いもしながらやっと得た利益。それが、ごそっと減ってしまうこの税金は、投資家にとって、切ない痛みをもたらすものです……。
ですが、これがつみたてNISAなら、同じように運用しても1円も税金が取られない!!この例で言えば、税金として取られてしまうはずの10万円が残り、儲けの50万円が丸々手に入るのです!
もし、インデックス投資で大成功し、何百万円も儲かったとしても非課税。もう一度言いますが、1円も取られません。ビバ!非課税!ヒャッホーイ!!!
……コホン。とにかく、声を大にしてお伝えしたいほど、お得な制度だということです。
良質な商品が揃っている!
ふたつめのメリットは、手数料が安い、高品質なインデックスファンドが揃っていること。なぜなら、『つみたてNISA』で販売できる商品は、金融庁が長期・積立・分散投資に適した低コスト商品かどうかをチェック。今買うことができる商品の中でも、優秀なものしか登録されていません。
これから初めて投資をする新米ママ・パパや、毎日忙しく、商品をゆっくり検討する時間のない子育て世代にとって、商品選びは高いハードル。その点、『つみたてNISA』ならば、少なくとも手数料が高いだけでパフォーマンスがよくない、ダメ商品を買ってしまう心配がないので、安心です。
少額で、長く投資できる!
3つ目のメリットは、投資できる金額(非課税枠)が年間40万円まで、最長20年と「少額の長期投資」に特化した制度であるということ。
年間40万円を12で割ると、月々3万3000円程度。あるいは、毎月3万円を積み立て、ボーナス時は2万円ずつ上乗せすると、ちょうど非課税枠を使い切れます。なお、非課税枠はすべて使い切る必要もなく、家計にムリのない範囲で投資したい若いママ・パパにとって、使いやすい制度と言えるでしょう。
非課税枠は、買った時点で消費されて、売っても復活しないのですが、売らずにずーっと保有することが前提のインデックス投資では、むしろ好都合です。
そして、積み立てできる期間は最長20年。2018年に制度が始まった当初は、最長で2037年までと期間限定でしたが、現在政府が延長を検討中。開始時期に関係なく、20年の積み立て期間が確保される形に向かっています。
少額でコツコツ、長期投資が前提のインデックス投資に、まさにピッタリの制度というワケですね!!
金融機関によっては1回100円から投資できるところもありますし、途中で増減したり、売却も可能です。インデックス投資を行う以上、できるだけ長く投資することをオススメしますが、教育費などで必要になったときに利益が十分出ていて納得できれば、売却して現金化することができます。
デメリットは?
インデックス投資にピッタリで、いいことだらけの『つみたてNISA』ですが、デメリットもあります。
それは、口座内で発生した利益(損失)と、通常の口座で発生した利益(損失)とを、損益通算(普通の課税口座にはある、損した場合の救済策)ができません。また、損失の繰越控除(損失を繰り越して、翌年以降の税金を減らすこと)もできません。
ちょっと難しい話ですが、簡単にいうと、将来、積み立て期間が終了したときに
●利益が出ている場合→メリットしかないので最高!
●損失が出ている場合→非課税の恩恵なし。税金の控除にも使えない。最悪!
という感じです。出口が勝負、ということですね。
それでもインデックス投資をするならイチオシです
デメリットについては、投資ブロガーたちともよく議論になります。ただ、「必ずメリットを取れる方法はないのか」は「必ず儲かる投資法はないのか」と同義。つまり、そのような投資はどこにもありません。
世界経済は上がったり、下がったりを繰り返すけれど、長い期間ではゆるやかに右肩上がり。この原則に投資するのがインデックス投資です。デメリットは含みおきつつ、非課税枠は積極的に活用する。そんな心構えでつみたてNISAを利用するのが、インデックス投資のスタンスとしてはいいと思います。
さて、次回はインデックス投資を続けていくと、必ず訪れる「売りたくなってしまうときの気持ちの持ち方」について。あわてる者はなんとやら……で、長年の経験から、グッと踏みとどまるコツをご紹介します!お楽しみに!
(監修・水瀬ケンイチ イラスト・おぐらなおみ 取材・文 大上ミカ)
水瀬ケンイチ
1973年生まれ。IT企業に勤める会社員であり、個人投資家。2005年より、ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」で自身の投資経験を綴り、インデックス投資家のバイブル的存在として認知される。著書に「お金は寝かせて増やしなさい」(フォレスト出版)など
参考文献:水瀬ケンイチ著書
お金は寝かせて増やしなさい(フォレスト出版)
全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド(朝日新書)
お金は寝かせて増やしなさい
フォレスト出版
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