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HPVワククチン/若年層の発病が増えている子宮頸がんを防ぐ

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HPVワクチン 子宮頸がん

子宮頸がんはワクチンで予防できるがんの一つといわれています。日本では2013年に定期接種となりましたが、まもなく「接種の積極的な勧奨」が中止されました。その後国内外でHPVワクチンの有効性と安全性に関する研究が進められ、効果と安全性が確認されたことにより、2022年4月に積極的な接種勧奨が再開されています。小児科医で神奈川県衛生研究所 所長多屋馨子先生に、HPVワクチンの接種についてと、ヒトパピローマウイルス感染症と子宮頸がんについて教えてもらいました。

HPVワクチンは、子宮頸がんの予防に効果を発揮

・定期接種
・不活化ワクチン
・筋肉内注射(上腕)

子宮頸がんなど、がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が予防できるワクチンです。ヒトパピローマウイルスには200種類以上の型があり、子宮頸がんを起こすハイリスク型のHPV15種類のうち、16型・18型・31型・33型・45型・52型によって起こる子宮頸がんを予防します。その他の型には予防効果がないので、検診とセットで受けることが大切です。HPVは性行為によって感染します。HPVワクチンは、すでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は認められていないので、初めて性交渉を経験する前に接種するのが最も効果的です。

日本で使用されているワクチンは、2価(16型・18型)の「サーバリックス®」と、4価(16型・18型・6型・11型)の「ガーダシル®」、9価(16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型・6型・11型)の「シルガード®9」で、2価と4価のワクチンは子宮頸がんの原因の約50~70%、9価のワクチンは約80~90%を予防するといわれています。「ガーダシル®」と「シルガード®9」は外陰部にできる良性のイボである尖圭コンジローマの原因となる、6型・11型の感染も予防できます。

海外では120カ国以上で公的な予防接種に導入されており、日本でも2009年から女性のみを対象に任意接種として接種できるようになりました。2011年から2価ワクチンと4価ワクチンが子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の対象となり、2013年から定期接種となりました。
しかし、13年6月に接種後に見られた慢性疼痛などの症状と接種との因果関係、痛みの頻度などについて、詳しい実態調査が必要と判断され、半年間をめどに「接種の積極的な勧奨」を一時中止することになりました。
その後、HPVワクチン接種後の慢性疼痛とワクチン接種の因果関係の調査研究が進められ、2021年11月の厚生労働省の専門家会議においてHPVワクチンの積極的な接種勧奨を再開することが決定され、2022年4月に正式に再開されました。

HPVワクチンは接種時の痛みが強いワクチンです。接種後にまれですが、広い範囲の痛みや、手足の動かしにくさ、動かそうと思っていないのに体の一部が動いてしまう不随意運動など、多様な症状が報告されています。ワクチンとの因果関係が不明なものも含めて、接種後に重い症状として報告されたのは、ワクチンを受けた1万人あたり約5人です。
4価ワクチンについては、2020年から日本でも男性に接種が可能となっていますが、公的な予防接種(定期接種)に導入されているのは女性のみで、男性への接種は任意接種となります。なお、男性への接種に対して、接種費用の一部を助成している自治体がありますので、不明な点があれば、住民票のある市町村(特別区)にお問い合わせください。

日本産科婦人科学会は、「科学的見地に立って、子宮頸がんの予防戦略においてHPVワクチンと検診の両者はともに必須であると考え、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を数回にわたり出しています」と述べていました。

近年、20~30代の子宮頸がんが増加しています。子宮頸がんは初期だと自覚症状がないうえ、日本では子宮頸がん検診を受ける人の割合が少ないので、子宮頸がん検診のことも含めて小児科や産婦人科の先生に相談してください。
なお、授乳中のママも欧米では接種可能ですが、日本では奨励されていません。また、妊娠中はワクチンの有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種することになっています。

【予防接種の受け方と時期は?】9価ワクチンなのか、2価、4価ワクチンなのかで異なります

9価ワクチンを15歳未満で始める場合は、2回接種、9価ワクチンを15歳以上で始める場合は、3回接種。2価ワクチンと4価ワクチンは年齢にかかわらず3回接種です。

定期接種の対象となるのは小学校6年生~高校1年生に相当する女子ですが、、1997年4月2日~2008年4月1日に生まれた女性のうち、まだ3回接種を受けていない場合は、2025年3月までであれば、残りの回数をキャッチアップ接種として公費で接種ができます。
ワクチンによって成分が違い、接種するスケジュールも異なります。1回目に受けたワクチンを決められた回数受けることが原則です。

サーバリックス®(2価ワクチン):初回接種の1ヶ月後に2回目、初回接種の6ヶ月後に3回目を接種
ガーダシル®(4価ワクチン):初回接種の2ヶ月後に2回目、初回接種の6ヶ月後に3回目を接種
シルガード®9(9価ワクチン):初回接種が15歳未満では2回接種、15歳以上では3回接種
・初回接種が15歳未満の場合:[2回接種]初回接種から5ヶ月以上あけて2回目を接種
・初回接種が15歳以上の場合:[3回接種]初回接種から1ヶ月以上あけて2回目、2回目接種から3ヶ月以上あけて3回目

【効果の持続期間は?】長期間効果が続きます

どのワクチンも効果は20年くらい続くと予想されています。しかし、ワクチンに含まれていないタイプのHPVによる子宮頸がんもあるので、ワクチンを接種しても、20才を過ぎたら子宮頸がん検診を受けることが大切です。

【副反応は?】痛みへの緊張感から、接種後に失神することがまれにあります

主な副反応は接種部位の痛みで、まれに接種後すぐに失神した例が報告されています。緊張しやすい人や立ちくらみを起こしやすい人は、接種前に医師に伝え、横になって受けさせてもらうといいでしょう。そして接種後30分は背もたれのある椅子にすわって、院内で様子を見てもらってください。これはHPVワクチンの接種後だけでなく、採血や献血など痛みを伴う行為のあとに起こることが知られています。
また、まれに慢性の痛みなどが起こることがあります。慢性の痛みに対応できる医療機関(ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関及び 厚生労働科学研究事業研究班の所属医療機関<2024年7月10日現在>)が厚生労働省のホームページに掲載されていますので、もし気になる症状が認められた時は、このリストにある医療機関を受診してください。

子宮頸がんとはどんな病気?

・かかりやすい季節は?…特になし
・かかりやすい年齢・月齢は?…20~30代
・主な症状は?…生理中以外や性交渉時の出血、おりものが増える、下腹部痛や腰痛、尿や便に血が混じる
・感染力は?…子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉体験のある女性であれば、だれもが感染する可能性のあるウイルスです

HPVが子宮頸部に感染するとほとんどは自然に消えてしまいますが、一部は前がん病変(異形成)から、子宮頸がんに進行することがあります。性的接触によって子宮頸部の粘膜に傷がつき、HPVが侵入して長期間感染することが原因とされています。性交渉の経験がある女性の約80%はHPVに感染しており、その約10%の人は軽い前がん状態になりますが、多くは気づかないまま自然に治っています。
しかし、がんになっても初期は自覚症状がなく、進行すると大手術が必要になります。手術後に障害が残ることも多いです。

【症状・経過は?】進行すると子宮や卵巣を摘出する手術を行います

ハイリスク型のHPVが感染した場合、子宮頸がんへの進行の可能性があるのが特徴。早期に発見できれば、子宮頸部の円錐切除という狭い範囲をとる手術で治療できますが、将来、妊娠したときに流産・早産のリスクが高くなります。がんが進行すると、子宮や卵巣を摘出するなど大がかりの手術が必要になり、妊娠が不可能になることも少なくありません。
また、末期まで無症状であることが多く、検診を受けていないと発見が遅れて死に至ることもあります。

【後遺症は?】妊娠ができなくなるなど、さまざまな後遺症が出ることが多い

子宮頸がんの治療成績はかなり向上し、救命率も上がっています。しかし、妊娠ができなくなる、排尿障害、下肢リンパ浮腫、ホルモン欠落症状など、さまざまな後遺症で苦しむ人は少なくありません。

【患者数・罹患率は?】若い女性の発症も多く、毎年約2900人が死亡

毎年約1万1000人の女性が子宮頸がんを発病し、約2900人が死亡しています(国立がん研究センター がん情報サービス 2019年、2021年の調査による)。ほかのがんと異なり、20~30代の若い世代の発症が多いのが特徴です。

乳幼児を子育て中のママ・パパは「うちの娘にHPVワクチンを受けさせるのはずっと先の話」と思う人も多いでしょう。でも、大切な娘が将来子宮頸がんになるのを予防するために、推奨年齢になったら予防接種を受けることをしっかりと検討しましょう。またこの機会に、ママは子宮頸がん検診を受けることを考えましょう。

情報提供/多屋馨子先生

取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

●記事の内容は掲載当時の情報で、現在と異なる場合があります。

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