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髄膜炎菌ワクチン/5~10%が死亡するといわれる髄膜炎菌性髄膜炎を予防する

髄膜炎菌ワクチン

急激に進行し、致命率も高い髄膜炎菌性髄膜炎などの侵襲性髄膜炎菌感染症を予防する髄膜炎菌ワクチンは、国内では2015年に承認されました。まだあまり知られていないこのワクチンの受け方や副反応など、予防接種の基礎知識と、髄膜炎菌性髄膜炎の症状や患者数などについて、小児科医で国立感染症研究所・感染症疫学センター第3室(予防接種室)室長の多屋馨子先生に教えてもらいました。

髄膜炎菌ワクチンは、学生の集団生活での感染リスクが高い侵襲性髄膜炎菌感染症を防ぐ

・任意接種
・不活化ワクチン
・筋肉内注射

日本で使われているワクチンはA、C、Y、W型の髄膜炎菌による重症の感染症を予防するワクチンです。B型の髄膜炎菌には効果がありません。
髄膜炎菌による髄膜炎などの侵襲性髄膜炎菌感染症は急激に進行し、死に至ることもあるため、ワクチンで予防することが欠かせません。2015年に日本でも承認されました。アフリカや中東、中でも「髄膜炎ベルト」と呼ばれるサハラ砂漠以南、セネガルからエチオピアにかけての地域に含まれる国は感染リスクが高いので、これらの国に出かけるときは接種がおすすめです。イスラム教のメッカ巡礼でサウジアラビアを訪れる時は髄膜炎菌ワクチンの接種証明書が求められるようです。
日本国内での発症例は多くありませんが、学校保健安全法で「学校で予防すべき感染症」の一つに定められています。学生寮や運動部などの集団生活で感染リスクが高まることが知られています。高校や大学で寮生活を送ったり、運動部などで集団生活を行ったりする場合は事前に接種しておくと安心です。
また、海外に留学する際には、留学先の学校に接種証明書の提出が必要になることも多いです。

【予防接種の受け方と時期は?】2~55才の人は1回接種。接種量は子どもも大人も同じ

2才~55才で1回接種します。接種量は子どもも大人も同じ0.5 mLです。
アメリカでは感染リスクの高い10代後半から20代の感染を予防するために定期接種となっており、11~12才で1回接種し、16才で追加接種することが奨励されています。

2才未満の小児、妊娠中・授乳中、56才以上の人の接種については、有効性・安全性が確立されていません。

【効果の持続期間は?】今のところ明らかにはなっていません

現状では効果の持続期間は明らかになっておらず、国内で承認されている髄膜炎菌ワクチンには、追加接種の規定はとくにありません。

【副反応は?】接種した部位の発赤、腫れ、痛み、発熱がみられることがあります

接種した部位の発赤、腫れ、痛み、発熱が出ることがあります。アナフィラキシーなど重度の副反応が出るのは極めてまれなケースです。
ワクチンの製造過程でジフテリアトキソイドを使っているため、ジフテリアの予防接種でアレルギー症状が出た人は接種できません。

髄膜炎菌性髄膜炎とはどんな病気?

・かかりやすい季節は?…温帯では寒い季節に、熱帯では乾期に多いといわれています
・かかりやすい年齢・月齢は?…学生寮などで共同生活を行う10代
・主な症状は?…発熱、頭痛、嘔吐。重症化するとけいれん、意識障害、紫斑・出血斑・点状出血、ショック、DIC(播種性血管内凝固症候群)、ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群※を起こすことがあります。
・感染力は?…感染した人の唾液や飛まつに濃厚な接触があると、感染リスクがあります。

飛沫によって、鼻やのど、気管の粘膜に髄膜炎菌が感染して発症。初期は発熱、頭痛、嘔吐など風邪に似た症状のみが現れるため、早期の診断が難しい病気です。発症リスクが高いのは学生寮などで共同生活を行う10代です。

※ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群:主に髄膜炎菌が原因。菌が血中に入り、紫斑、臓器不全、昏睡、ショック、DICを起こし、副腎出血から急速に副腎皮質不全、死亡に至る重篤な病気。

【症状・経過は?】急激に症状が進み、治療をしなければ、50%以上が死亡

風邪症状から始まり、髄膜炎菌が血液や髄液などへ侵入すると、菌血症※1や敗血症※2、細菌性髄膜炎などの重い病気を引き起こします。
ほかの細菌による髄膜炎と比べ、髄膜炎菌による髄膜炎は病状の進行が急激に進み、意識障害、ショック、全身性紫斑などの激しい症状が現れやすいのが特徴。治療をしなければ50%以上が死亡するといわれています。

※1菌血症:血液中に細菌がいる状態
※2敗血症:細菌感染の炎症が全身に広がり、臓器障害が起きて重篤になった状態

【合併症・後遺症は?】致命率が高い合併症を起こしたり、重度の後遺症が出たりします

●合併症
重篤な合併症である意識障害を伴う髄膜炎、ショックや全身性紫斑を起こすウォーターハウス・フリードリヒセン症候群を起こすことがあり、これらの合併症は致命率が高いです。

●後遺症
難聴、神経障害、手足の切断が必要になるなどの重い後遺症をもたらす確率が10~20%程度あります。

【患者数・罹患率は?】世界では2014年の1年間で約1万1500人が報告されています

日本国内では戦後、年間4000人を超える人が髄膜炎菌性髄膜炎を発症していました。近年の患者数は減っているものの毎年発症しており、2018年の患者数は37人でした。
また、世界全体としては2014年1年間で約1万1500人が発症しています(2014年のWHO<世界保健機関>のデータによる)。

髄膜炎性髄膜炎は日本では多い感染症ではありませんが、症状が急激に進行し、致命率も高い怖い病気です。学生寮や運動部の合宿生活などは感染リスクが高まるといわれるので、将来、子どもがそういう生活を選ぶときは、予防接種を検討しましょう。

情報提供/多屋馨子先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

多屋馨子先生(たやけいこ)

Profile
国立感染症研究所 感染症疫学センター 第三室(予防接種室)室長。小児科医。高知医科大学(現 高知大学医学部)卒業。大阪大学医学部小児科講座に入局し、大阪大学医学部附属病院・関連病院小児科、大阪大学医学部微生物学講座・小児科学講座で小児科の臨床、ヘルペスウイルスを中心とした基礎研究、小児感染症学の教育に従事。2001年から国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。02年から国立感染症研究所感染症情報センター第三室(予防接種室)室長。13年から現職。

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