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日本脳炎ワクチン/発症すると致命率が高く、治療薬がない日本脳炎を予防する

日本脳炎ワクチン

蚊を媒介して感染する日本脳炎は、発症すると致命率の高い病気。しかも治療薬がありません。そんな怖い病気を予防するのが日本脳炎ワクチンです。予防接種の受け方や受ける時期、副反応など、予防接種を受ける前に知っておきたいことと、日本脳炎の症状や現在の患者数などについて、小児科医で国立感染症研究所・感染症疫学センター第3室(予防接種室)室長の多屋馨子先生に教えてもらいました。

日本脳炎ワクチンは、精神発達の遅れ、知的障がいなど重い後遺症のリスクがある日本脳炎を予防

・定期接種
・不活化ワクチン
・皮下注射

日本脳炎は致命率が高く、精神発達の遅れや知的障がいなどの重い後遺症が出ることもある恐ろしい病気です。しかも、発症すると有効な治療法がないので、ワクチンで予防することが非常に重要になります。

かつて使用されていたマウス脳から作られたワクチンは、接種後に神経系の病気である急性散在性脳脊髄炎(ADEM:アデム)の重症例が報告されたことから、2005年5月から積極的な勧奨が差し控えられました(接種の中断ではありません)。しかし、WHO(世界保健機関)は、ワクチン接種は必要と述べています。
新しく細胞培養ワクチンが開発され、2010年から接種の勧奨が再開されました。

【予防接種の受け方と時期は?】3才で2回、4才で1回接種して基礎免疫をつけ、9~12才で追加接種

厚生労働省は、3才に2回、4才に1回の接種を標準としています。3回の接種で基礎免疫をつけ、追加の1回で確実に免疫をつけるようにします。
必ずしも赤ちゃんのうちに急いで接種しなくても大丈夫ですが、最近日本脳炎の患者が発生した地域、九州・中国・四国・近畿地方など西日本では、6ヶ月からの接種を奨励していることもあります。接種時期や接種の方法について、早めに自治体に確認しておきましょう。

<標準プラン>
Ⅰ期(3回接種):3才の間に1~4週間隔で2回接種。2回目の約1年後に3回目を接種。

Ⅱ期(1回接種):9~12才に1回接種

*接種一時見合わせ期間に対する特別措置あり
通常の定期接種期間が接種の一時見合わせ(積極的勧奨の差し控え)と重なり、接種しなかった回数分を、定期接種として受けられるようになりました。
1995年4月2日~2007年4月1日生まれの人は、20才までは定期接種として合計4回のワクチンを受けられるので、日本脳炎ワクチンの接種回数を母子健康手帳で確認しましょう。詳しくは保健所などに問い合わせてください。

・1回も接種していない→Ⅰ期分3回、Ⅱ期分1回(計4回)を接種できます
・Ⅰ期で1回接種した→Ⅰ期分2回、Ⅱ期分1回(計3回)接種できます
・Ⅰ期で2回接種した→1期分1回、2期分1回(計2回)接種できます
・Ⅰ期で3回接種した→2期分1回接種できます

【効果の持続期間は?】10年程度持続します

効果は10年ほど続くといわれています。
日本脳炎が流行している地域では、Ⅱ期の接種後、10年に1回くらいの割合で予防接種を受けたほうがいいでしょう(任意接種)。

【副反応は?】接種部位が腫れたり、多少発熱したりするのは、よく見られる反応

接種後2日以内に接種部位が腫れたり、発熱したりすることがあります。ごくまれに、じんましんやかゆみなどのアレルギー反応が出ることがありますが、心配のないレベルです。
39度以上の発熱やけいれんなど気になる症状が現れたときは、予防接種を受けた医療機関を受診してください。

日本脳炎はどんな病気?

・かかりやすい季節は?…夏~秋
・かかりやすい年齢・月齢は?…幼児および高齢者
・主な症状は?…高熱、頭痛、嘔吐、意識障害
・感染力は?…ウイルスを持った蚊に刺されることで感染するため、人から人への感染はありません
・ママからの移行免疫は?…6カ月ごろまで有効

日本脳炎ウイルスを持っている蚊(日本では主にコガタアカイエカ)を介して人にうつる病気で、感染してもほとんどの場合は症状が現れません。しかし脳炎を発症すると重症化しやすく、国内での致命率は20〜40%です。とくに子どもと高齢者は死亡リスクが高くなります。

地域分布では圧倒的に西日本が多いのですが、地球温暖化の影響で、今後は北にも広がっていくことが予想されます。また、日本脳炎のウイルスは豚やイノシシの体内で増殖するので、豚や野生のイノシシが多く生息している地域は注意が必要といわれています。

虫よけ剤を使って蚊に刺されないようにすることは、日本脳炎の感染予防に有効ですが、確実ではないので、ワクチンは必ず受けてください。

【症状・経過は?】感染者の100~1000人の1人が急性脳炎(日本脳炎)を発症し、命の危険も

感染しても多くの人は無症状ですが、100~1000人に1人は6~16日の潜伏期間を経て、高熱や意識障害が出る急性脳炎(日本脳炎)を発症します。そして、そのうち20~40%ほどが死亡するといわれています。
日本脳炎ウイルスに対する特効薬はないので、症状を抑える対症療法で回復を待つしかありません。

【合併症・後遺症は?】とくに赤ちゃんは重度の障がいが残るリスクが高い

●合併症
特にありません。

●後遺症
発病して回復した人の45~70%にけいれん、運動発達の遅れ、知的障がいなどの後遺症が出ます。とくに赤ちゃんは、重度の障がいが残ることが多いといわれます。

【患者数・罹患率は?】国内での患者数はおおむね10人以下。でも、アジアでは流行が続いています

患者は減少傾向にあり、現在国内での患者数は年間おおむね10人以下です。年齢的には50才以上の人が多いのですが、2007~16年の約10年間で10歳以下の子どもが7人発症しました。
日本脳炎ウイルスは東アジア、東南アジア、南アジアにかけての温帯地域・亜熱帯地域・熱帯地域に広く分布しており、今も流行地域が拡大。決して油断してはいけない病気です。

国内での患者数はかなり少ないとはいえ、日本脳炎ウイルスはアジアを中心に広く分布しており、子どもが感染すると致命率も高い怖い病気です。標準的な接種は3才から(定期接種は生後6か月から可能)なので、赤ちゃんのママやパパは「まだ先の話」と思いがちですが、受け忘れを防ぐために、今から予防接種スケジュールに組み入れておきましょう。

情報提供/多屋馨子先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

多屋馨子先生(たやけいこ)

Profile
国立感染症研究所 感染症疫学センター 第三室(予防接種室)室長。小児科医。高知医科大学(現 高知大学医学部)卒業。大阪大学医学部小児科講座に入局し、大阪大学医学部附属病院・関連病院小児科、大阪大学医学部微生物学講座・小児科学講座で小児科の臨床、ヘルペスウイルスを中心とした基礎研究、小児感染症学の教育に従事。2001年から国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。02年から国立感染症研究所感染症情報センター第三室(予防接種室)室長。13年から現職。

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